しかし保健所をスルーした保護は行政の統計には出てきません。そのため、保護団体に直接持ち込まれる犬猫はむしろ増加しているのに、環境省の統計では、年々引き取り数が減少しているという矛盾が生まれているのです。保健所に収容される犬猫の数が減っているからといって、飼えなくなる犬猫が減っているというわけではないのです。

「殺処分ゼロ」が動物を苦しめている

「殺処分ゼロ」は、本来動物を守るという目的のためのスローガンであり、設定された一つの目標だったはずです。しかし、その言葉があまりにも人の感情を捉え、強すぎるメッセージを伝えたために、「殺処分ゼロ」にとらわれることで、結果として、不適切な飼育に陥り、動物福祉を侵害し、動物を苦しめてしまう事態が発生しています。

ほとんどの動物保護団体は、動物福祉に配慮し、健全な運営を行っています。しかしながら、一部にはそうではない団体や施設があります。殺処分ゼロのために、犬猫を引き受け続けた結果、保護団体や保護ボランティア個人宅で多頭飼育崩壊が発生しています。

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多頭飼育崩壊が相次いでいるワケ

保護団体の多頭飼育崩壊とは、その言葉通り収容しきれない、世話できないほど多くの動物を抱えることで日常的な世話やケアが行き届かなくなり、糞尿を片付けることもできず不衛生な状態となり、場合によっては動物を死なせてしまうような状態を指します。

このような劣悪な飼育は、一部のブリーダー等で問題視されていましたが、それが一部の保護団体・保護ボランティアでも発生しています。近年も年に数件、保護団体による多頭飼育崩壊が発生し報道されています。

殺処分ゼロの実現には、これまで殺処分対象とされていた譲渡されにくい犬猫の保護が不可欠です。病気や障害があったり、人に対する攻撃行動や極度の怖がりがあれば、新たな家庭に迎えてもらうには時間がかかり、保護団体で終生飼育をするケースも少なくありません。当然収容頭数は増加していきます。しかし、飼育放棄される犬猫は次々と発生します。殺処分が再開されないようにと、無理をしてでも保護するわけです。