使命感だけでは保護し続けられない現実
「殺処分されるくらいなら、ちょっと狭いけど、無理してもう1頭保護しよう」
「私が保護しなければ、この子たちは殺処分になってしまう」
その判断の積み重ねが保護団体の詰め込み飼育・多頭飼育崩壊を生んでいきます。目の前の命を救わなければという使命感から保護活動をはじめた方の中には、自分の財産をなげうって活動される方も少なくありません。
しかし、本当に財産が尽き、人の生活もままならぬ状態となれば、当然、保護動物の食費や医療費も確保できません。
保護活動はお金も体力もいりますが、多くの保護団体は組織化されておらず、代表者や中心メンバーのマンパワーに支えられている団体がほとんどです。代表者や中心メンバーが動けなくなれば、保護活動の継続は難しくなります。高齢になり、仕事を辞め、病気を抱え、財産を食いつぶしながら多数の動物を保護する事例は少なくありません。
客観的に見れば当然、保護活動からの引退を考えるべきだと思うのですが、「目の前に殺処分されるかもしれない動物がいるから、引退したくてもできない」と続ける人もいます。これは保護動物や保護活動そのものへの精神依存状態ともいえます。
一時的に助成しても根本的解決にならない
先日、ある財団が動物保護団体への助成事業を検討しているとのことで、その審査に携わりました。その動物保護団体は、自宅で保護活動を行っており、自分の財産を保護活動に投じて、活動を行ってきたそうです。
収容頭数は30頭ほどで、なかなか譲渡しにくい中型犬以上の大きさの犬が中心でした。しかし、貯蓄が底をついてきて、このままでは保護活動を継続できなくなるため、財団に助成申請を行ったという経緯でした。
この団体を支援すべきかを問われた私は「現状の考え方では支援すべきでない」と強く主張しました。仮に助成したとしても、そのお金を使いきったら同じ状態になってしまうだけで、健全で持続可能な保護活動への変化は期待できないと考えたからです。