全世界での累計発行部数が1億冊を超える、アクション漫画の金字塔『北斗の拳』。2026年には、新作アニメ『北斗の拳 -FIST OF THE NORTH STAR-(フィスト オブ ザ ノーススター)』の放映も決まっている。

 その原作者である武論尊さんは現在、4億円の私費を投じた長野県佐久市の「さくまんが舎」で、漫画家の卵たちを相手に「武論尊100時間漫画塾」を開き、後進の育成に努めている。一方で、自らも出版社に持ち込みを続けるなど、80歳近くなってもバイタリティを維持する武論尊さんに、次回作の構想などを含めて話を聞いた。(全5回の5回目/最初から読む)

多くの私財を投じてつくった「さくまんが舎」で、若手とともに研鑽を続ける武論尊さん(以下、写真撮影=川内イオ)

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 多作の武論尊さんは、『北斗の拳』の原哲夫氏や『サンクチュアリ』の池上遼一氏以外にも数々の著名漫画家の原作を書いている。例えば、『タッチ』のあだち充氏や、『ベルセルク』の三浦建太郎氏とタッグを組んだこともあった。

「健太郎くんは『ベルセルク』が始まった頃で、新人だったから行き詰っちゃって、描けなくなったらしいんですよ。 それで、担当から『物語のノウハウを教えたいんで、読み切りを書いてもらえませんか?』 って連絡があって、僕が原作を書くことになったんです。それで3本ぐらいやって、健太郎君が元気になって、『ベルセルク』を再開したんですよ」

  しかし、すべてがうまくいくわけではない。読み切りを含め、これまで書いてきた100作品をすべて覚えているという武論尊さんは「10打数1安打」と表現する。10回原作を書いて、1本ヒットするかどうかというシビアな世界なのだ。

武論尊さんほどの大家でも「10打数1安打」という厳しい世界だという

 武論尊さんは「原作者は漫画家さんの運命を抱えている」とも語る。

「原作が悪ければ、どんなに絵が良くてもダメなんだよ。やっぱり原作がしっかりしてないと意味がないと思ってます」