大正から昭和前期に暗躍した“政界のフィクサー”辻嘉六(1877-1948)の遺言状が発見されたことが、ダイヤモンド編集部の千本木啓文副編集長の取材で分かった。鳩山一郎元首相らを資金面で支えてきた辻の活動の一端が分かることに加え、昭和史の裏面を探るうえでも重要な一次史料である。
遺言状は亡くなる3日前の1948年12月18日に作成
松本清張の小説「けものみち」に登場する政財界の黒幕・鬼頭洪太のモデルである辻は、右翼活動家・児玉誉士夫と共に、1945年につくられた日本自由党(自民党の前身)の結党資金を用立てたことで知られる。鳩山以外にも、古くは原敬や三木武吉ら数々の大物政治家を裏で支えてきた。
千本木氏が遺言状を目にしたのは2022年夏。嘉六の娘で女性初の副総理秘書官や自民党幹事長秘書などを務めた辻トシ子の遺品の中から、支援者が発見し、千本木氏に提供した。
遺言状は嘉六が亡くなる3日前の1948年12月18日に作成され、巻紙に毛筆で記されている。大半は遺産の分配に関する内容で、逗子に所有していた別荘や故郷・岐阜の墓などについて触れ、自身が複数の女性との間になした子供たちに言及。次のように記されている。
〈一、遺産ハ全部売却し又は債権取立をして現金とし債務を支拂ってから前記の通り分配すること〉


