いまから60年近く前、28歳で銀座のクラブのマダムにのし上がった女性が金のもつれなどから男に殺され、バラバラにされて各所に捨てられた。なぜ、そんなことに?
当時の新聞記事は見出しはそのまま、本文は適宜書き換え、要約する。文中いまは使われない差別語、不快用語が登場するほか、敬称は省略。殺害された女性は「M」、犯人の男は「K」とする。(全3回の2回目/続きを読む)
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北海道から上京し、水商売の世界で売れっ子に
事件が発覚したのは1967(昭和42)年11月。当時の朝日新聞(以下、朝日)の記事は2人の経歴を中見出し付きでかなり詳しく報じている。まずは被害者Mについて。
勝気な「銀座の女王」 北海道出身のМさん
殺されたМさんは北海道江別市出身。父親(58)は会社社長のほか市議もしており、裕福な家庭で恵まれた娘時代を過ごした。札幌市内の女子高に通っていたころから評判の美貌で、頭もよく、陽気で世話好きな性格だった。卒業後、しばらく家事手伝いをしていたが、7年前、「東京で自活したい」と1人で上京した。
東京に来てからはずっと銀座や新橋のバー、キャバレーなど、「水商売」の世界で暮らしており、持ち前の美貌から、どの店でもナンバーワンを争うほどの売れっ子だった。そのため、週刊誌に「銀座の女王」などと紹介されたり、「1億円(現在の約4億1000万円)の貯金の持ち主」と評判になったりしたほど。昨年11月から銀座のバー「ブラックタイ」のマダムを務めるかたわら、10月に開店したばかりの赤坂の深夜レストラン「ロイヤルパレス」でもマダムとして働いていた。
Kとは赤坂のキャバレーにいたころから付き合い始めたらしく、「ロイヤルパレス」に移ってからも2~3回、Kが現れたのをホステスが見ている。その付き合いもかなり深かったようだという。現在住んでいる六本木のマンションに入ったのは7月で、敷金30万円(同約123万円)、家賃は5万円(同約20万円)。管理人の話だと、毎月家賃をきちんと払っており、派手な職業の割には地味で堅い人という印象。部屋を訪ねる男もなかった。勤めのかたわら、北海道の実家には週2~3回も電話をかけるほど家族思いだったといい、11月3~4日には知人と一緒に両親のもとに帰ることになっていた。
記事は続いて、Kの経歴に触れる。




