高嶺の花って言葉、久しぶりに目にした気がする。

 石原さとみ、大丈夫か。せっかく『アンナチュラル』という際だった傑作ドラマと出会い、その容姿と資質を活かした適役に、やっと恵まれたと安堵していたのだが。

石原さとみ ©文藝春秋

 華道の名門、月島流の家元の長女、月島ももを石原は演じる。結婚式の当日に、婚約者(三浦貴大)から他の女を妊娠させたことを告げられ、破談に。身も心もボロボロになった彼女が、下町の商店街で流行らない自転車店を営む、ぷーさんこと風間直人(峯田和伸)と出会う。風采はあがらないけど、根っから善人で無垢なぷーさんに、ももはなぜか心魅かれる。

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 脚本が野島伸司と知って、案じていたが、ここまで通俗的とは。でも相手役が峯田君だ。彼は巧いからね。石原さとみと、どう絡んでいくかには興味が湧いた。ぷーさんと幼なじみの商店街のオッさん連中は、ももをキャバクラ嬢と勘違いする。キャバ嬢になりすまして泥酔した彼女が目覚めると、そこはぷーさんの家で、朝食が出される。

 恋人の裏切りから、ももは自律神経を患い、味も匂いも喪失していた。ぷーさんが作った味噌汁に鼻を近づけた彼女の顔にかすかな変化が生まれた。メザシと納豆も、うれしそうに彼女は食べる。

 よくあるパターンだ。でもね、峯田君と石原さとみが、ちょっと幸福そうに朝メシを食べているシーンが、いいんだよ。二人の恋が成就するといいなとか思ったりする。

 だが野島伸司はあざとい。破談は、家元である父(小日向文世)が仕掛けたものだった。花を活ける芸術家に恋愛など無用という冷徹な信念で彼女の愛を壊した。

 さらに既成の華道を破壊しようという、新興流派のイケメン家元、宇都宮龍一(千葉雄大)を登場させ、月島家を金と性のドロドロ地獄に引きずりこむ。ももの継母ルリ子(戸田菜穂)は、実子なな(芳根京子)を家元にしたい。そこに龍一はつけこんだ。

 月島流の乗っとりを企む龍一は、ルリ子を辱しめながら抱く。そして純情な、ななまで毒牙にかけようとする。もちろん最終目標は、ももだ。千葉君、野心に駆られた腹黒い男を演じてここまで似合うとは。

 薄汚れた世界で、愛を育もうとする二人が健気(けなげ)で、つい夢中になって観ている。野島マジック怖るべし。石原が初心(ウブ)な峯田君を引き寄せ、プレスリーの曲をバックに唇を重ねるシーンが美しい。

高嶺の花
日本テレビ系 水 22:00~23:00
https://www.ntv.co.jp/takanenohana/