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他者への無理解。そして言葉の不完全さが、愛する者を引き離す。八雲は、母の悲劇を通じてそれを誰よりも知っていた。
八雲が卓越した文学者だったからでもなければ、セツが英語習得に優れていたからでもない。二人がお互いを必要として、必死だったからこそ、怪談は生まれたのである。
八雲が求めていたのは、完璧な翻訳者ではなかった。求めていたのは、失われた母の声。暗闇の中で、優しく物語を語ってくれる、あの声だった。そしてセツは、その声になったのであった。
昼間 たかし(ひるま・たかし)
ルポライター
1975年岡山県生まれ。岡山県立金川高等学校・立正大学文学部史学科卒業。東京大学大学院情報学環教育部修了。知られざる文化や市井の人々の姿を描くため各地を旅しながら取材を続けている。著書に『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)『おもしろ県民論 岡山はすごいんじゃ!』(マイクロマガジン社)などがある。
ルポライター
1975年岡山県生まれ。岡山県立金川高等学校・立正大学文学部史学科卒業。東京大学大学院情報学環教育部修了。知られざる文化や市井の人々の姿を描くため各地を旅しながら取材を続けている。著書に『コミックばかり読まないで』(イースト・プレス)『おもしろ県民論 岡山はすごいんじゃ!』(マイクロマガジン社)などがある。
