GPT-3の学習に「真水70万リットル」

 AIによる環境負荷は電力消費だけではありません。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出や、水や鉱物といった資源の消費といった問題もあります。

 気候変動に歯止めがかからない現状において、脱炭素も持続可能性の達成にかかわる重要な目標の一つです。AIのカーボンフットプリントについてもさまざまな研究がありますが、よく言及されるのは大規模なモデルの訓練による排出量は自動車のライフタイム全体での排出量の5台分程度とするものです。これは少し前の研究ですので、現在のより大規模化したモデルではもっと増えているかもしれません。

 しかし電力の場合と同様、AIが脱炭素に貢献する可能性も主張されています。先述の国際エネルギー機関の報告書でも、データセンターからの排出を上回る削減につながる可能性があるとしています。AIは脱炭素に貢献するというより強い立場をとっているAI開発者もいます。しかし、このような主張に対してはポジショントークにすぎない、楽観的すぎるといった批判があります。国際エネルギー機関の報告書は、AIによる削減量は気候変動に取り組むには全く足りない程度であるとも指摘しています。AIは脱炭素の道具になりうるが、それ単独で問題を解決してくれる銀の弾丸ではないとされていることには注意が必要です。

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 AIの稼動は発電やサーバの冷却のための水資源も必要とします。水は人間の生存に必須の資源であり、飲料水だけでなく、食料生産・エネルギー生産・工業生産などでも必要となります。既に水資源は希少となっているにもかかわらず、AIの持続可能性の研究ではウォーターフットプリントへの関心は高くないとされています。よく参照される数字は、GPT-3の訓練で70万リットルの真水が使われ、2027年には世界全体でAIのための取水量が42億から66億立法メートルにもなると予測される、というものです。

 環境負荷の見積りの難しさは、全ての影響を計測・集計することの困難さにあります。それに加えて、資源間の相互関係もあります。一例として、水・エネルギー・食料ネクサスの考え方を説明します。ネクサスはここでは連環、つながりを意味します。環境分野では、これらの資源を一体として分析する研究が進められてきています。水は水力発電などでエネルギー生産に使われ、灌漑などで食料生産でも消費されます。エネルギーは、揚水などのために必要で、食料生産でも使われます。そして、食料の一部はバイオ燃料として利用されます。こうしたつながりまで考慮した分析が、個々の資源の分析よりも複雑になるのは明らかです。AIが資源のつながりにどのような影響を及ぼすのかについては、まだほとんど研究がないといっていいでしょう。