ここまでで説明してきた以外の環境破壊などの問題についてはOECDの報告書が参考になります。この報告書ではAIがもたらす直接的かつネガティブな影響を、(1)製造、(2)輸送、(3)オペレーション、(4)エンドオブライフの四つの段階に分けて説明しています。このうちオペレーションの段階についてはここまでの内容と重複しますので、それ以外について簡単に説明したいと思います。

 まず、CPUやGPUなどのハードウェアの製造には資源の採掘と消費が伴い、それによって土壌汚染・地下水汚染・水使用・放射性廃棄物・大気汚染などが生じます。輸送の段階では、化石燃料の消費や温室効果ガスの排出に加えて、大気汚染・油漏出・有害物質の排出・騒音公害などの問題があります。とはいえ、輸送全体の中でICT関連が占める割合、さらにはその中でAI関連が占める割合はわずかと考えられます。

 エンドオブライフにおいては、電子廃棄物e-wasteのリサイクルと処分が問題になります。そうした問題の一つとして、発展途上国で処分が行われ、現地に大気汚染・酸性廃棄物・放射性廃棄物・地下水汚染などによる環境問題や社会問題を生じさせることが挙げられます。そして、AI関連機器においてもサーキュラーデザイン・長寿命・リサイクルなどの原則を取り入れる、さらなる取り組みがなされるべきであるとされています。

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Eコマースのレコメンド機能も資源消費の一因に?

 間接的かつネガティブな影響としては、AIの利用が環境に対するネガティブな影響を悪化させるような事例が挙げられています。例えば、Eコマースにおけるレコメンデーションは持続可能でない消費を拡大するかもしれません。企業がクラウド利用に移行することによって、自社のIT関連での温室効果ガス排出を報告義務のある対象ではなくし、任意報告の対象にしているという問題も報告されています。技術による効率性の改善がかえって資源消費などを加速させてしまう「リバウンド効果」も、AIの利用による間接的かつネガティブな影響の例といえるでしょう。

 これらも含めたAIの環境影響評価が必要ですが、ライフサイクルやサプライチェーンの全体を視野に入れた評価は困難です。このOECDの報告書でも、AIの環境影響には測定の空白が五つ存在すると指摘されています。第一に、測定に関する標準が存在しないという問題があります。第二に、国家・企業・モデルそれぞれのレベルでの環境影響のデータ収集が不十分です。第三に、ICT全般の環境影響からAIだけの環境影響を区別して評価するのは難しい。実際さまざまな報告書を見ても、AIだけのデータはないという場合が多いのです。第四に、エネルギー消費と温室効果ガス排出だけでなく、それ以外の環境影響、たとえば生物多様性への影響や、水消費やレアアースの採掘による資源への影響なども考慮しなければなりません。最後に、環境に関する透明性と平等性の改善が必要とされています。