津田の「嫌!」がほとばしる瞬間のおもしろさ
このリアクションのおかしみを引き立てているのが、最初から最後まで企画に「嫌々」取り組む津田の姿勢である。ロケが長引き、泊まりを余儀なくされることからくる「嫌」。翌日に入っていたはずの大型CM撮影と、ギャラ1000万円が消えたことを認めたくない「嫌」。
朝が早い「嫌」。夜が遅い「嫌」。もちろん寒いのも「嫌」。番組が求める立ち回りをそれなりにやらなければとは思っているが、時に何を求められているのか要領を得ないことがありそれも「嫌」。そもそも一方的に指示されること自体が「嫌」――。
津田のリアクションが最高潮に達するのは、こうしたさまざまな「嫌」が絡まり合い、「嫌々々々々々!」とばかりにほとばしったときだ。感情の処理が自身のキャパシティを超えてヒートする。そんなリアクションをおもしろく、なおかつチャーミングに見せることにおいて、津田の右に出る者はいないだろう。単なる愛嬌ではない。憎たらしさを、ほんの少しだけチャーミングさが上回っている、その絶妙な感じ。
助手役の女性とのロマンスなど、時折訪れる「嬉」も、「嫌」がベースにあるからこそアクセントになる。「嫌」と「嬉」の振れ幅が、おかしみを増幅する。虫のあとのおっぱい。絶叫のあとのスケベ心。
「1の世界」と「2の世界」の混乱
シリーズ第3弾では、津田の「嫌」のベースとなっている世界観も明らかとなった。「1の世界」と「2の世界」だ。津田はこう語る。
「僕は2のつもりなんですけど1なんです今。2の津田なんですけど、このなかで1の津田になるんですよ。だから混乱を生じてしまうんです」(2024年12月18日)
津田の言う「1の世界」とは、名探偵津田の物語の世界のこと。「2の世界」は現実世界を指している。
津田は、名探偵津田の企画に参加している最中も、基本的には「2の世界」で生きている。「1の世界」の外側から、あり得ない展開にツッコミを入れ、悪態をつく。
シリーズ第4弾の物語の中でも、医者役で登場したザ・たっちのたくやをずっと「たっち」と呼び続けるし、父親が殺された娘役のキャストを見て「マジで泣いてるやん、あの女優」と言ってしまう。物語上の「お約束」なんて気にしない。それより気温が気になるし、何より早く帰りたい。そんな津田だからこそ、無理やり「1の世界」を押し付けてくる企画中は常に、感情のベースに「嫌」があるわけだ。
