「日本全国一万余りのホームレス同胞のためにも、余は如何にして人殺しとなりし乎、を世間に公表することが私の遺し得る最大遺産となるだろうが、あぁ、それでもやっぱり私は無期刑にならなければなりません。先人のホームレスの方々の尊い血と涙によって、今日のホームレスを取り巻く社会は築き上げられましたが、私はその礎になることは、私欲によってなることができないのです。公か私か、どちらかを選ぶべきか。この公表して、有期刑になっても、私はもうホームレスに戻ることなくすぐさまの犯罪を為すほかないのだから、もう何人か殺すよりはここで公表せずに無期刑になったほうが、目先では私だが、遠目には公ではないか。刑務所に入らないという選択肢はないのです。ようするに、裁判が終わってからなら公表できるのですが」(2019年1月21日)

 つまり「何にむしゃくしゃしたか」を公表することは、全国のホームレスのためになるという意味だろう。しかし小島は、公表して減刑になることを危惧している。有期刑になれば、また罪を犯すことになるから、それは回避したい。だから裁判後に公表したい。要約するとそういうことか。

「権利のために闘うことは自身のみならず、国家・社会に対する義務であり、ひいては法の生成・発展に貢献することになりますから、無期刑になりさえすれば、権利のための闘争をしたいのです」(2019年1月21日)

 なにやら熱い想いがあるようだが、私にはさっぱり見当がつかない。

 それは、本当に減刑の可能性があるようなことなのか。ホームレスの権利について闘える切り札になるようなものなのか。

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 小島は一方的に、その出来事について語りたがっているようだが、そもそもなぜ刑務所に入りたいのかについては謎のままだ。

拘置所から届く手紙

 私はリアクションに困ってしまい、しばらく頭が回らなかった。小島の心理がまったく読めない以上、このまま流れに身を任せるしかない。

 私は、素直に状況が理解できないことを伝え、いくつかの質問と、裁判前に記事を公表することは控える旨を書いて送った。

 「私は人を殺して、心底よかったと思う」

 手紙はその後、間を置かず次々と届いた。

 拘置所では、封筒1通につき便箋7枚までと入る分量が決まっているが、小島は7枚きっちり使って書いてくる。7枚目の最後の1行でピッタリ終えることも多く、書ききれないときは2通連続で届いた。

写真はイメージ ©moonmoon/イメージマート

 封筒をよく見ると、切手は左端に沿って貼られ、郵便番号は四角いマスの中でなぜか上寄せ、住所は右端に綺麗に揃えられている。裏面を見ると、今度は差出人の住所と名前が下揃えだ。独自のルールを徹底しているところに、強迫観念的なものを感じた。

 また手紙の内容は、古典や哲学書や宗教書など、様々な書物からの引用で繫ぎ合わせた文章が多く、知識をひけらかしているのか、あるいはふざけているようにしか思えない。