ただ、これまではいかに移植件数を増やすかの議論が先行し、ドナー家族の声に十分に耳が傾けられてきたとは言い難い。

「お金いくらもらったの?」家族を苦しめる声

そして多くのドナー家族自身も、積極的に口を開くことができなかった。

福嶌医師は言う。

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「日本ではまだまだ、家族の臓器を提供したことを周りの人に言いづらい。『なんでそんなことを』とか、『かわいそう』とか、場合によっては『お金たくさんもらったの?』とか、多くのドナー家族が、周囲からの声に悩まされています」

数年前に脳死になった夫の臓器を提供した三重県の米山順子さんも、周囲の声に苦しんだ経験を持つ。(第1回記事:「だから周りには「夫の最期」を話せなかった…夫の臓器を提供した女性を追い込んだ“知人からの一言”」)

夫の意思に沿って提供を決断したが、そのことを明かすとポジティブな反応はほとんどなかった。ある人からは「いくらもらったの」とも尋ねられたという。

「それ以来、自分の周囲の人には臓器提供したことを話せなくなりました。でも2年ほど前、移植関連のシンポジウムで韓国に行ったとき現地の方に言われたんです。『あなたは自分のしたことを誇っていい』って。『あなたと夫は5人の人を助けた。胸を張っていい』って。はっきりそう言ってもらえたのはそのときが初めてで、感覚の違いに驚きました」(米山さん)

そして、移植の現場がシステムや規則に縛られていること、ドナー家族を支援する体制ができていないことも課題だと、福嶌医師は指摘する。

“病院の努力頼り”でいいのか

例えばドナー家族には、厚生労働大臣からの感謝状が贈られる。感謝状の宛名はドナー本人だが、受け取るのは家族の代表として署名した人で、それ以外の家族には届かない。こんなケースが実際に起きているという。

若い男性が亡くなり、家族は悩みながらも提供を決めた。男性の妻の元には感謝状が届いたが、別居する男性の母には届かない。母にとって何より大切な息子の死だが、そこに対するフォローはほとんどなかった。