中国の「一帯一路」構想で重要な役割を担うイラン
第二次トランプ政権下で、中国の脅威は強く意識されている。中国による台湾侵攻の可能性もあるなかで、主力の軍事的リソースは中国を取り囲むような形で再配備したいのである。
いつまでも中東のいざこざに付き合っている暇はないというのが本音だろう。先にも述べたようにペトロダラー体制はゆらぎ、中東の石油の地政学的な重要性はアメリカにとって相対的に低下している。イスラム原理主義勢力、イランの核開発という火種となる要素は早めに潰して中東の優先順位を下げたいという思惑が見え隠れする。
2025年6月の核施設への空爆後、どこまでイランに対して踏み込んでいくかは未知数だが、腹の底ではイランの政権交代を狙っているように思う。ただし、それをすぐに実行するかどうかはわからない。フセインのクウェート侵攻に端を発した1991年の湾岸戦争のときもすぐには体制を転覆させず、実際にフセインを追い詰めたのは2003年のイラク戦争においてだ。弱体化させてから本格的に叩く、というのもアメリカがしばしば行ってきた手だ。
アメリカは、「大国間競争」を見据えて、次世代の軍の装備のあり方も、テロリストとの非対称戦ではなく、中国人民解放軍のような高度な技術を持つ敵とのハイエンドな兵器(AI兵器も含む)による戦闘を意識し始めていると言われている。
このようにアメリカの地政学的な思惑というフィルターを通して中東情勢を分析すると、地上軍を投入してイランとの全面戦争をはじめるつもりもなければ、イスラム過激派との戦いに深入りすることもないと私は見ている。アメリカが「戦略的競争相手」として強く意識するのは中国なのである。
今回のイラン核施設への攻撃を非常に苦々しく思っているのは中国だろう。過去数年戦略的にイランへのインフラ投資を行ってきた中国は、単に割安で石油を輸入できるのみならず、イランは「一帯一路」構想で重要な役割を占めており、イランもまた軍事力を増強するために「数千トン規模の弾道ミサイルの原料」を中国に求め、両国は緊密な関係を築いてきた(「ロイター日本語版」2025年6月18日)。イランが弱体化すれば中国の中東への外交的影響力の低下はまぬがれないだろう。