東京・秋葉原にある家電店の「オノデン」。1951年から現在の場所で家電を売り続けているが、多くの家電店と異なり多店舗展開を一度もしていない。周囲の家電店が撤退していくなかで、1店舗しかないオノデンはなぜ生き残れたのか。2代目社長の小野一志さんに、フリージャーナリストの前屋毅さんが聞いた――。(前編/全2回)
電話対応の相手はいきなり社長
いきなり社長だった。
社長インタビューを申し込むために代表電話に連絡し、電話をとった女性に趣旨を伝えると、「少々お待ちください」という返事。しばらくして電話口にでてきた男性は、「うちなんか街の電器屋に毛の生えたようなものだから、何の参考にもならないよ」と断ることを前提にしたようなぶっきらぼうな対応だった。
その男性を「広報担当者」だと思っていたので、「ずいぶん失礼な社員だな」という思いがまず頭をかすめる。それでも、やりとりをするうちに「変だ」と気づきはじめたので、「電話口にでていただいているのは?」と訊ねてみた。
戻ってきたのは、「社長をやってます」との返事だった。通常なら取材申し込みの窓口になるのは、広報とか総務の担当者である。いきなり社長が登場したことに、こちらは頭が真っ白になりそうになる。それでも、なんとか取材趣旨を繰り返す。それに社長は「参考にならないよ」と繰り返す。
しばらく同じようなやりとりがあって、ようやく取材を受けてもらえることになった。受けてもらえるようになったものの、「頑固者だろうな」という第一印象が頭にこびりついて離れず、難儀な取材を覚悟した。
「オノデン坊や」のモデルは誰なのか
取材当日、店舗の入り口に行くと、そこには社長本人が立っていた。
「来たら、そのへんの社員に訊いてくれたらわかる」と言われていたが、まさか社長本人が入り口にいるとは思わなかった。たまたまだと思っていたのだが、インタビューを終えたあとでは、「きっと待っていてくれていたのだ」と確信していた。オノデンの小野一志社長は、そういう人物なのだ。
