福間の要望をどう評価するか
福間が将棋連盟に求めている要望は下記のようなものだ。
(1)妊娠の申告を受けたら希望に応じて日程や対局場所の変更を行う。
(2)出産予定日の前後計14週間であっても体調や医師の意見に応じて出場可能とする。
(3)産休中にタイトル保持者の地位を事実上降格させない。
これらの点について、中井さんは「非常に難しい問題」と語る。
まず(1)について。
「タイトル戦は対局場となる自治体が長い時間をかけて誘致していることも多く、また倉敷藤花戦(決定局を岡山県倉敷市で実施)や霧島酒造杯女流王将戦(第1局を宮崎県都城市で実施)など、対局の場所そのものがスポンサーにとって重要な意味を持つ棋戦もあります。
また妊娠時の体調は不安定なことが多く、対局直前に将棋が指せなくなることも十分考えられます。ケガや急病の場合の不戦敗と、妊娠による体調不良を区別できるかどうか。対局の日程変更を含め、一律に適用できるルール作りは非常に難しいと思います」
妊娠によって女性が社会的不利益を被ることは許されない、という考えは現代のコンセンサスである。
しかし、タイトル戦に出場する女流棋士は唯一無二の存在であり、巨大な商業主義のなかで生きる人間としての宿命を背負っている。多くの関係者が1年に1度の「選ばれし2人」の戦いに向けて多大なコストをかけている以上、記者会見で弁護士が説明した「リプロダクティブ・ライツ」(性と生殖に関する権利)の概念だけで将棋界のルールを策定することは難しいところがある。
本人の意思だけを尊重するわけにもいかない
(2)について。福間は「産後8週間が経過していなくても、本人が希望すれば出場を可能としてほしい」と連盟に要望したが、それは認められなかった。中井はどう考えるか。
「私も産後1カ月でタイトル戦に出場した経験があり、福間さんの気持ちがよくわかります。産前に関していえば、母子の健康と安全を考えると、万が一何かあったときにどうするのかという意見は必ず出てくるはずです。
私自身はプロとして、連盟からの対局通知に返信した後は何が起きても自己責任だという立場ですが、そうは言っても本人の意思だけを尊重するわけにはいかないのでしょう。産後であれば、8週間が経過する前でも出場の可能性は検討されていいと思います」




