「暫定王者」制度は公平といえるのか

 最後の(3)については、タイトル挑戦者の権利を考える必要がある。

 福間は将棋連盟側に「暫定王者」制度を提案していた。それはおおむね次のような案である。

 タイトル保持者が産休する場合、その年は挑戦者争いの成績上位2名によって「暫定王者」を決める。翌年は通常通りの形でタイトル戦が開催され、福間はタイトルホルダーとして予選を勝ち抜いた挑戦者を迎え撃つ。要は「王者が妊娠した場合はタイトル戦を1年間凍結する」というプランだ。

ADVERTISEMENT

©︎細田忠/文藝春秋

「彼女が疑問視していたのは、タイトル保持者が出産のため不戦敗となり失冠した場合、現状では何の保証もないということでした。確かに妊娠したら事実上、タイトル剥奪となるような現状においては何らかの制度設計をする必要はあると思います。

 ただし、タイトル保持者の地位を完全に保全しようとすると、1年間そのタイトルを目指して必死に予選を勝ち抜いた挑戦者の権利を剝奪することになり、それは全女流棋士に関係することなので、公平性の観点から新たな疑問が出てくる。本当に難しい問題です」

 この困難な局面で、将棋連盟は鮮やかな妙手を発見することができるのか。いま問われているのは女流棋士たちの当事者意識と、将棋連盟の「思想」だ。

 ここで、会見では深く言及されなかった別の論点にも触れておきたい。中井がタイトル戦に連続登場していた当時と今では、決定的に異なる点がある。それは、女流棋戦賞金の高額化だ。

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。

次の記事に続く 福間香奈「異例の記者会見」では触れられなかった“隠れた論点”…中井広恵女流六段は「女流タイトル賞金の高額化」をどう捉えているのか

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。