NHK「ばけばけ」では、遊郭で働く女性に身請け話がくるシーンが描かれた。小泉八雲は、当時の日本をどう見ていたのか。ルポライターの昼間たかしさんが、文献などを基に史実に迫る――。

小泉八雲の肖像(写真=Frederick Gutekunst/旧シンシナティ公共図書館/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

八雲が抱き続けた「疎外された人々」への興味

NHK朝の連続テレビ小説「ばけばけ」。ヘブン(トミー・バストウ)とトキ(髙石あかり)も夫婦になり、周辺の騒動が描かれた今週。1月22日の第79回では、遊郭で働く、なみ(さとうほなみ)に身請け話がくる騒動が描かれた。

史実に基づけば、八雲が松江の遊郭について触れた記述というものはない。

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だが、興味がないわけではない。生涯、社会から疎外された人々に興味を抱き続けた八雲にとって、わが身を売らねばならない女性の悲劇は、見過ごしてはいられないものだった。それは、八雲が記者として注目を集めたシンシナティ時代のタンナリー(皮なめし工場)での殺人事件を取材した記事からも明らかだ。

1874年11月11日付の『シンシナティ・エンクワイアラー』紙に掲載された記事「It is Out!(ついに明らかに!)」で、八雲は取材して得た事件の詳細……犯人はいかなる手口で被害者を殺害し、遺体を炉に押し込んだかを刻銘に描いている(Lafcadio Hearn, "It is Out!" Cincinnati Enquirer, November 11, 1874. Cincinnati & Hamilton County Public Library, Digital Collections.)。

警察情報から得た犯人の自白などを基にした記事は、怖ろしく克明だ。しかし、八雲はそんな猟奇趣味の興味本意だけで記事を終わらせていない。ここで、八雲は事件の発端である主犯アンドレアス・エグナーの娘・ジュリア・エグナーの悲劇に多くのページを割いた。

“センセーショナルな事件報道”で終わらせない

ジュリアは「非常に美しく」「魅力的」な少女だったが、父親は彼女を自分の経営する酒場で働かせていた。八雲は「父親は彼女の美しさを利用して客を酒場におびき寄せていた」と記す。