29年を奪われた2人の運命は、再審で明るみに出た録音テープの編集痕や毛髪鑑定書、死体検案書によって覆る。無罪確定の先に待っていた国家賠償訴訟と、冤罪を背負って生きたその後の人生とは――。その後の「布川事件」を、新刊『世界で起きた恐怖の冤罪ミステリー35』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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無実を証明する「重大な証拠」

 1996年11月、逮捕から実に29年ぶりに出所となった2人は引き続き無実を訴え、2001年12月に第二次再審請求を申し立てる。そこで、弁護団は改めて「罪のない人物を救済するために必要不可欠である」として、自分たちが把握していた43点の未提出書類の開示を請求。対して検察は26点は見当たらない、14点は再審とは無関係として、3点のみの開示に応じる。が、そこにも無実を証明する重大な証拠があった。

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 まず、桜井さんの取り調べ時の録音テープ。その中で捜査員は15時18分に取り調べ開始し、16時44分に終了したと告げている。計1時間26分。だが、実際に再生したところ、17分以上短い1時間8分28秒しかない。しかも、録音をよく聞いてみると、会話の途中11ヶ所で「パチン」という音が混ざっている。桜井さんが自主的に自供したよう思わせるため、不都合な部分を削除したのは明らかだった。

 他にも弁護側が求め開示された毛髪鑑定書で、遺体のそばにあった8本の毛髪が顕微鏡検査により3本は被害者、5本は別人のもので、桜井さん、杉山さんとは一致していないと記されていたことが判明。この5本の毛髪が真犯人のものである可能性も十分考えられた。

 隠されていた証拠はまだある。死体検案書だ。