検察が隠蔽していた「目撃証言」
桜井さんの自白調書では〈木綿のパンツを首に回し絞め殺そうとしたが、長さが足りなかったため両手の掌で首を絞めた〉と記されており、裁判所の判決でも扼殺を認め有罪としている。が、事件から36年後に開示された死体検案書では、死亡原因に〈絞殺、頸部に紐状の痕跡あり〉と記載されていた。つまり、被害者が紐状のもので絞殺されたのが事実で、このとき開示された実際のパンツも長さが67センチあり、首に巻きつけるに十分だった。
さらに、検察は2人が犯人ではない可能性を示す目撃証言も隠蔽していた。実は犯行当日の19時過ぎ、障子の修理を依頼すべく被害者宅を訪ねた女性がいた。彼女の証言によれば、このとき道路に面した家の玄関前に1人の男性が立っており、もう1人別の男が庭先で被害者と立ち話をしていたのが見えたそうだ。玄関先で立っていた男を見たのはほんの1メートルの距離。
自白調書では、この男が杉山さんであると記されているが、彼女と杉山さんは顔見知りで、もし男が杉山さんなら声をかけないわけがないと証言していた。また、急を要する用事でもなかったため女性はその場を後にしたが、その15分後、彼女の息子も被害者宅前を通り過ぎ、同じ2人の男を目撃していた。彼ら親子の証言では、2人の男ともに長髪だったという。事件当時、桜井さん杉山さんともに短髪。そもそも親子が偽りの証言をする理由がなく、ならば、その場にいた不審な2人の男が真犯人である可能性が高くなる。
こうして次々に証拠が開示されたことにより、2005年9月21日、水戸地裁土浦支部は再審開始を決定。これを不服として検察は即時抗告・特別抗告するも、いずれも退けられ、2009年12月15日に再審開始が確定する。そして、2011年5月24日、再審を行った同支部は「目撃証言は信用性に欠ける、2人の自白は信用性がなく、任意性にも疑問がある、2人のアリバイを虚偽とする証拠はない」として桜井、杉山の両被告に強盗殺人罪について無罪を宣告。6月7日、検察側が控訴を断念したことで無罪判決が確定した。