犯罪歴のある男がなぜ警察官に?
1939年9月に始まった第二次世界大戦の初期、ハマースミスのキング・ストリートにあるコモドア・シネマで工長として3年間働いた後、予備役警察に志願しハロー・ロード警察署に配属される。信じられないことに、採用にあたり当局は過去の犯罪歴を一切調べなかったそうだ。
クリスティは権威を持った自分に喜びと誇りを感じ、毎日のように制服姿を鏡に映し悦に入った。そして、己の地位を利用し、女性を尾行し隣人を監視し、どんな些細な犯罪であろうと違反者を厳しく取り締まった。
また、私生活では親戚宅を頻繁に訪れ家を留守にするエセルの目を盗んでは、自宅に売春婦を連れ込み性交。職場で知り合った既婚女性とも不倫関係になり、後に事が発覚、怒った女性の夫から半殺しにされている。
この一件で、クリスティは一線を越える。
止まらない殺人衝動
1943年8月24日、オーストリア人軍需工場労働者で、時折売春をして収入を補っていたルース・ファースト(同21歳)を、妻の留守中、自宅に招き入れ性交。その後、衝動的にベッドの上で彼女の首を絞め殺害し、遺体を裏庭に埋める。妻エセルが帰宅したのは、その数時間後のことだったという。
半年後の同年末、警察を退職し、ラジオ工場で事務員として就職。そこで同僚女性のミュリエル・イーディ(同31歳)と出会い、1944年10月7日、彼女が患っていた気管支炎を治せる「特別な混合物」があるとして、同じくエセルの留守中に自宅に招き入れる。
そこで「修道女のバルサム」と呼ばれるベンゾインチンキ剤をチューブで吸わせ、彼女が椅子でリラックスしている間に密かにチューブをガス栓に繋ぎ変え、それと知らずに一酸化炭素を吸い込み意識を失わせた後、レイプし首を絞めて殺害。ルースと同様、遺体を裏庭に埋葬した。
1946年5月から郵便貯蓄銀行の2級事務員として働き始めたクリスティのアパートにエヴァンスと妻ベリルが越してくるのは、2年後の1948年。
