「ジョン・クリスティさんですね?」
この日の朝、パットニー橋の堤防付近で警察に職務質問されたクリスティは名前を聞かれ「ジョン・ワディストン」と答える。が、帽子を取るよう促され、それに従ったところ警官が指名手配の人物と気づき「ジョン・クリスティさんですね?」と問いかけた。果たして、クリスティは本人であることを認め、その場で逮捕された。
なお、このとき警官が所持品を調べたところ、エヴァンスの勾留に関する古い新聞記事の切り抜きと、4つの縮れ毛が入ったタバコケースが発見されている。後の調べでその中の一つが妻エセルのものとわかったが、他が誰の毛なのかはわかっていない。
取り調べで、クリスティはエヴァンスの娘ジェラルディン以外の7女性の死について、おおむね責任を認めた。というのも、供述は「気づいたら相手が死んでいた」「誤って転んで頭を打ち死んでしまった」という曖昧なもので、当初、具体的な殺害手口などは一切明かさなかった。が、警察が司法解剖の結果などクリスティの犯行を裏づける証拠を示すと、徐々に真実を語り始める。
殺人および死体遺棄罪で起訴されたクリスティの裁判は、エヴァンスの審理が行われたのと同じオールドベイリー裁判所で1953年6月22日から始まった。被告クリスティは耳を引っ張り、手を離したり握ったり離したり、頭を撫ぜるなど極度の緊張状態にあり、証言台での言葉も聞き取れないほど小さかった。
公判で弁護側は、彼の精神異常と記憶喪失を理由に無罪を主張する。対して、検察側はクリスティを診察した刑務所の医師を証人として法廷に召喚し、ヒステリックな性格ではあったが、明確な殺意があり自分が行ったことも十分理解していたとの証言を得る。
審理はわずか4日間で終わり、同月25日、陪審員は有罪・死刑の判決を下す。