繰り返される強姦・殺人

 犯行は計画的で、8日前の12月6日、「ロンドンで将来性のある仕事を見つけたので新年早々、夫婦で引っ越す予定だ」と上司に告げて事務員の仕事を自主退職し、犯行後にエセルを訪ねてきた彼女の知人には「妻はすでに引っ越しており、自分もすぐに向かう」と説明。

 また殺害翌日にはエセルが10日に書いた手紙の日付を15日に書き換え、彼女の妹に送るなど数々の隠蔽工作を施した。そして、妻の指輪や時計を売りさばいたうえ、エセルのサインを偽造し妻名義の銀行口座から現金を全て引き出し、さらに自宅の家具の大半を売却し犯行は続き、1953年1月19日に妊娠6ヶ月のリタ・ネルソン(同25歳)が犠牲となる。

 彼女はベルファスト出身でラドブローク・グローブに住む姉を訪ねる途中、偶然カフェでクリスティと知り合った。出産を望んでおらず、それなら自分が堕胎手術をしてあげようと言葉巧みに自宅に誘われ、レイプの後に絞殺された。翌2月、以前から付き合いのあった売春婦のキャサリン・マロニー(同26歳)を殺害。

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 さらに翌3月始めにはヘクトリナ・マクレナン(同26歳)と恋人男性とカフェで知り合い、金がないという彼らを数日間自宅に泊め、同月6日、男性が職探しに出ている隙にヘクトリナを殺す。

 なお、この3女性は2番目の犠牲者ミュリエルと同様、一酸化炭素ガスを吸わせ意識が失くなったところで強姦・絞殺され、遺体は前記したとおり、発見されるまでキッチンの裏壁の後ろにある小さな窪みに毛布に包まれ放置されていた。

 3月20日、転貸の約束をした男性から金を受け取った後、アパートを出てロンドン市内の簡易宿泊所に滞在。が、24日に新聞で事件が報道され自分の指名手配を知るや、宿泊所を出てロンドン市内を放浪。その傍ら『ニュース・オブ・ザ・ワールド』紙に電話をかけ、多額の報酬金を条件に独占取材に応じると提案し話をまとめる。が、約束の場所に本人が現れることはなかった。

 逃亡生活が終わるのは3月31日。