これに先立ち5月23日には「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」が法務省から示されましたが、これについて難民支援団体からは本来、政府として保護すべき人びとまでもが不当な退去強制や収容の対象となりかねないと、反対の声が出されています。

受入れの「質」と「量」の両面で再設計が必要

 こうしてあわただしい取り組みが行われる中で、2025年8月に示されたのが鈴木馨祐法務大臣の主導する私的勉強会の中間報告書です。ここでは、本書で指摘しているように、在留外国人数が国立社会保障・人口問題研究所の試算より増加のスピードが速いとした上で、受入れの「質」と「量」の両面で再設計が必要としています。

 現在「特定技能」にのみ設定されている受入れ上限を、他の在留資格(技術・人文知識・国際業務、経営・管理など)にも拡張する可能性や政府と自治体との関係の見直し、制度横断的な情報連携の強化の必要性などが論じられています。つまり、本書で主張するような本格的な移民政策の必要性を暗示しており、高市早苗政権では大局的な立場から外国人受入れのビジョンと道筋を示すことが求められます。

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 外国人との秩序ある共生社会推進担当大臣を設置した高市政権は、本書の執筆時点では、在留外国人への厳格な対応が目立ちますが、共生の重要性も同様に強調する必要があります。そうでないと国内の外国人に不安が広がる恐れがあり、また海外からは単純に排外主義的ととられるリスクがあります。昨今、筆者に対して海外メディアからインタビューの申し出が多く寄せられますが、彼らには「外国人との秩序ある共生」が排外的なイメージを持って認識されています。日本のイメージダウン、国益に反するこうした認識が拡散しないためにも、規律と共生のバランスをとった慎重な発信が必要でしょう。

 外国人問題に関心が高まった理由の一つとして、在留外国人の急増があります。受入れ体制が整っていれば、増加しても治安を含め問題の発生は防げますが、現状では日本語教育や外国ルーツの子どもたちの教育体制などが大きく遅れています。

 秩序ある受入れのためには、外国人の増加と受入れ体制の整備との間で歩調を合わせる必要があります。日本人と外国人との間での分断を含め、将来、問題を起こさないためには、受入れ準備が不十分なままの外国人の受入れはセーブすべきだとも言えます。未来を見据えた思慮ある「外国人との秩序ある共生社会」の構築が必要なのです。

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