なぜ中国軍は台湾を包囲したのか?

──昨年末、中国側が台湾を取り囲んでおこなった大演習「正義使命2025」は、従来の2022年以来の同様の大演習とは似て非なるものだというご意見です。どういうことなんでしょうか?

林穎佑氏(以下、林) 理由の違いです。これまでの場合、2022年はペロシ米下院議長の訪台が理由、2023年は蔡英文総統がアメリカでマッカーシー米下院議長と会談したのが理由……。2025年4月の1回目の大演習も、頼清徳総統が中国を指して「境外敵対勢力」と発言したことが理由でした。ある意味、台湾側としても中国軍の演習行為を予見できたわけです。

 しかし昨年末の場合、一見すると台湾側は目立った動きを起こしていなかった。頼清徳総統が中国を怒らせる発言をしたわけでもない。なので、中国軍の大演習を誰も予想していなかったのです。しかし、起きてしまった。

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──理由なく中国が武力威嚇をしてきた、と?

 いえいえ、後になって理由の見当がついたんですよ。高機動ロケット砲システムのHIMARS。これまで台湾に18台しかなかったのに、今回はアメリカが82台も台湾に売却した。HIMARSは台湾島から直接、中国大陸を打てますから、攻撃性兵器なんです。それを台湾側が100台以上保有することになった。

中華民国陸軍が保有するHIMARSの現物。2026年1月27日、軍の春節戦備操演(春節前のメディア向け演習公開)にて、台湾人軍事ライターの王清正撮影。

──12月18日までに成立した、アメリカから台湾への過去最大規模の武器売却ですね。報道ですと、総額111億ドル(約1兆7000億円)規模だとか。なので、同月29日からの中国軍の大演習が始まったと。

 はい。中国はこれまで、大演習の理由を「台湾独立反対」だと言っていましたが、今回からは「干渉反対」(=他国の介入反対)と言いはじめた。

 これは大きな変化です。今後の中国の大演習は「台湾が何か言ったから」だけじゃなく、周辺地域が何かをした、という要因でも起きうる。