三国志さながらに攻めてくる

──しかし、ロシアや北朝鮮はそう中国の思い通りに動くものでしょうか。特に北朝鮮なんて、誰の言うことも聞かないように思えます。

 北朝鮮は、現在のロシア・ウクライナ戦争で最大の受益者です。彼らにも協力する理由がある。(台湾有事の場合も)北京の命令に従うというよりも、第一列島線の混乱に乗じて火事場ドロボウ的な利益の拡大を図る。

軍事パレードを観覧する金正恩朝鮮労働党総書記ら ©︎AFP=時事

──大戦末期にソ連が満州や樺太・千島に侵攻したのを思い出しますね。中国としては、露・朝に好き勝手をやってもらって、それ自体を陽動にすると。

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 兵法三十六計、囲魏救趙の計(※)というやつです。

※注:「囲魏救趙」…中国の戦国時代、孫臏が同盟国の趙を救う際、敵の魏軍と正面で戦わず背後を突いた故事。

──『三国志演義』で劉備が死んだあと、魏の司馬懿が蜀攻撃の策を立てて、他国の呉や異民族の南蛮・羌に陽動させて侵攻しようとした五路の計とかもありますね。

 ええ。中国ですからねえ。

本当に戦争が起きる可能性はあるのか

──しかし、策は策として。そもそも習近平は本当に戦争をやる気なんでしょうか?

 あまりやらないと思います。人民解放軍の実力がそこまで到達していませんし、なにより内部の腐敗問題があまりにも深刻です。

 軍全体の人事の動き(※)を見ますと、習近平は完全に新しい軍内統治を考えようとしていると感じます。ただ、部下たちが功名合戦に陥って、習近平の意思を超えた行動を「やってみせる」可能性はある。

台湾の中華民国陸軍の国産地対空ミサイル「陸剣2」。2026年1月27日、王清正撮影。

※注:この取材後に張又侠の失脚事件が発生。林氏が台湾メディアに出したコメントを読むと、「事態にちょっと驚いた」と話しつつ、「習近平は軍内の安定(=粛清の継続)を対外作戦よりも優先する」。いっぽうで「彼を忖度する現場レベルの冒険的な行為は増え、当面の中国軍は『戦略は保守的、戦術は積極的』になる」とのこと。

 

 いっぽう、軍内に恐怖政治が敷かれたことで、かえって海外からのスパイ工作がやりやすくなるという見立ても。事実、このコメント後にアメリカのCIAが人民解放軍の将官を対象にしたリクルート動画を発表している。

──日本でもよく話題になっている「2027年に台湾有事が起きる説」はどう思いますか?