うどんは白米に並んで汎用性が高い食べ物ではないだろうか。「ごはんのお供」という言葉があるが、うどんだって大抵のものを受け入れる度量がある。それを「つるとんたん」が証明してきたのはご存知のとおり。イタリアン風も中華風もなんのその。そういう懐の深さから生醤油一本で勝負できる気っ風の良さまで、うどんの身ごなしの高さは麺界最強だと思う。

 この夏もそうした柔軟なうどんたちに出合った。装いも味わいも実に爽やかな、猛暑を吹き飛ばす夏うどん3杯を紹介しよう。

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ズッキーニ、パプリカ、トマト……夏野菜の「ひやしカレーうどん」

 下馬一丁目の交差点、ぎょろっと大きな目玉のふくろう像が目印の小さなお店だ。勝手口をのぞくと、網戸の奥で厨房を動き回る店主・三木さんの姿が見える。のっけから申し訳ないが、決してアクセスがいいお店ではない。祐天寺・池尻大橋・三軒茶屋に囲まれた場所にあり、一番近い祐天寺駅からでも歩いて12~13分かかる。それでも時分時はおひとり様から家族連れまで、三木さんのうどんを求めるお客の出入りで暖簾が忙しなく揺れる。

お店の守り神に挨拶して入店

 定番のかけうどんの美味さはもちろん、ここでは気ままな季節モノも楽しみの一つ。この時季のお薦め「ひやしカレーうどん」は、ズッキーニにパプリカ、トマト、オクラと旬の野菜の彩色が目にも楽しい一杯だ。

ひやしカレーうどん900円

クミンやカルダモンの爽快な香り

 各地でうどんを食べているつもりだが、それでも初めて食べさせてもらったとき、それはそれは衝撃だった。カレーうどんといえばカレーをつゆで割った粘状のものが定石だが、三木さんの作り方はどこかスパイスカレーのよう。

 だしは使わず、マスタードシードや青唐辛子から引き出した鋭角的なうまみにさまざまなスパイスを重ね、ココナッツミルクと豆乳でまろやかに仕上げる……と、うどん店としては個性的なアプローチなのだが、これがなかなかどうして。スープを一口すする。ハチミツの甘みを感知した2秒後、クミンやカルダモンの爽快な香りが勢いよく鼻腔を抜け、思わず深呼吸。最近またバージョンアップさせた手打ち麺は舌の上を滑るようにすべすべで、瑞々しく、上品なしなり。

モチモチ感が特徴の小麦粉「もち姫」を取り入れたばかり

 極めつけに「三木さん、ありがとう!」と心の中で叫ばずにいられなかったのが、野菜の魅せ方。炒めた方が美味しいものはじっくり、食感を残した方が美味しいものはサッと仕上げる配慮がなされ、一つ一つに向き合う楽しみに溢れている(※「ひやしカレーうどん」は9月末まで提供。日替わりなので事前確認をお薦めする)。

INFORMATION

「手打ちうどん ニューさがみや」
東京都世田谷区下馬1-18-9
080-7025-4914
11:30~15:00(木~土11:30~15:00、18:00〜21:00)
※8月14日~22日まで夏季休暇
火水定休