子どもたちが頭に触られることを極端に嫌ったワケ

 また、子どもたちは頭に触られることを極端に嫌った。理由を尋ねると、「尊師のパワーが抜けてしまうから」。頭に触れられるのは、教祖の麻原彰晃だけだったのである。「この子どもたちに我々はどう関わっていったらいいのか」と、保坂さんたちは途方に暮れた。

 さて、当初の打ち合わせでは、子どもたちはまず児相の2階会議室で健康診断を受けることになっていた。ところが、子どもたちは「おしっこ、おしっこ」と口々に訴え、トイレに駆け込んだ。上九一色村からの長時間のバス移動で、尿意を我慢できなくなったのだ。このため、名前の確認など、受けつけをする時間もなく、尿検査を行うことになった。検査用の容器は警察が用意し、持ち帰って薬物反応を調べた。陽性反応が出た子は1人もいなかったという。

 トイレから戻った子どもたちは、2階の会議室に移動し、身体計測と医師による診察を受けた。記録によると、子どもたちは特に抵抗することもなく、素直に従っていたようだ。ただ、頭を坊主にしている女の子もいたため、性別や身元の確認で混乱が生じたとされる。子どもたちの身元は4歳~14歳の男子28人、女子25人だと判明した。

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 健康診断の最中、「監禁されている」と子どもたちが騒いだ。何事かと職員が尋ねると、ガラスケースに入った日本人形を指差している。人形を見て「監禁されている」と訴えていたのだ。この頃、オウムによる拉致、監禁事件のニュースが頻繁に流れていたので、居合わせた職員たちは顔を見合わせた。

 なお、当時の健康診断の記録も残っていた。ほぼ全員が「顔色不良」と診断され、一部の子には「皮下出血」「打撲」「貧血」があったことが記録されている。身長は、「平成6年度学校保健統計調査速報」の同年代平均値よりも下回る子は53人中47人で、9割近くを占めた。体重も同様の数値で、平均値を下回っている。この結果について児相は、教団内での偏った食生活や運動の制限が「発育不良」を引き起こしたのではないか、と分析している。