「子どもを帰してください」

「なんで、子どもに会わせないんですか!」

 子どもたちの健康診断を行っている頃、外には上九一色村のサティアンから駆けつけた親たちが集まっていた。子どもを取り返すため、児相に入ろうとして、警備の警察官に阻まれていた。健康診断を行う2階の会議室にも抗議する親たちの声が聞こえてきた。窓から父親を見つけ、「父ちゃんだ」と言う子もいた。

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「中に入れろ」「入れない」で押し問答が続いた結果、代表者の男性信者1人だけが中に通された。矢崎司朗所長が面会したが、話し合いは終始平行線のままだった。代表者は子どもを引き渡すように要求したが、矢崎所長は「それはできない」と拒否したのだ。子どもを連れ戻すことが難しそうだとわかると、やがて親たちは引き上げていった。

風呂の湯が真っ黒に

 一方、児相内部では、職員の悪戦苦闘が続いていた。

 健康診断を終えた子どもたちが今度は「お腹が空いた」と訴えてきたのだ。この日、子どもたちは昼食を摂っていなかった。風呂に入れる前の午後4時30分頃から急きょ食事を摂らせたが、子どもたちの食べる様子に、職員たちは啞然とした。以下は保坂さんの証言だ。

「手づかみで食べるという子がかなりいました。おかわりしていいよと言ったら、みんな飢えているのか、ガツガツ食べましたね。どんぶりいっぱいのご飯を3杯もおかわりした子もいました。それでも、オウムで禁じられていたのか、魚とか肉は食べませんでしたね。そして自分が食べ終わったら、ほかの子が食べ終えるのを待てずに、勝手にポンポン歩き回る。生活習慣というか基本的なマナーがまったく身についていませんでした」