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特集集まれ「インターネット老人会」

そして、僻地は雑踏になった 秋葉原ラジオ会館「日陰者の青春」

「物好きの趣味」だったパソコンが、世界の必需品になっていくまで

2018/08/20

先輩から借りた「三國志」をプレイしたり

 しかし、小学校時代のそれは、あくまで「自分が楽しむもの」であり、同好の士と出会うのはまさにこの数学研究会に入ってからのことです。後輩と連れ立って秋葉原のラジオ会館最上階にあった日本電気(NEC)ショールームに行き、先輩から借りた「三國志」をプレイしたり、先輩が放棄したMZ-1500に持ち込んだゲームをロードしてみんなで改造したり。日本電気が発売したPC-8801mkIISRシリーズは当時最先端だった多彩なグラフィック機能と、ロードに快適なフロッピーディスクドライブを兼ね備え、「テグサー」やら「ザナドゥ」やら「イース」やら「大戦略88」やら、時間だけはいっぱいあった受験終了後のモラトリアムを満喫できる懐かしい作品群がひしめいていました。親とは折り合いが悪くて帰りたくなかったので友達の家を泊まり歩き、また友達の親もまた鷹揚で、夏休みの半分を友人宅で快適に過ごすという中学時代。

2014年に建て替えられた現在の秋葉原ラジオ会館 ©iStock.com

パソコンの界隈はそのまま私自身の青春だった

 インターネット老人会と言われて、でもインターネットってのは簡単にポッと出たものじゃないのです。私の場合は、この数学研究会から、パソコン向けゲームをレンタルしてくれるお店に入り浸り、マシン語を覚え、ついにはコピーガードを外す「Wizard」や「The file master」といったツール(当時はそれが合法か違法かも良く分かっていなかった)よりも早く新作のコピーガードを外すために猛烈にプログラムを学ぶようになり、その先人たちが巣食うパソコン通信という世界があるということを知り、そこには草野球愛好家から秋葉原のショップオーナーやバイヤー、店員が集まるBBSがあることを知る……。そんな下地があったうえに出てきたのが、インターネット(ウェブ)ってすごいらしい、おまえ、Mosaicって知ってる? そういえば、アドレスを叩けばBBSではないコメントが書けるサイトっていう仕組みがある……。夢が、広がっていくわけです。

世界中でブームとなったマイクロソフト社のWindows95 ©iStock.com

 思い返せば、Windows95のブームのころはもうNIFTY-Serve(ニフティサーブ)にどっぷりと浸かっていて、携帯電話のビジネスに興味を持って国際電気(現・日立国際電気)に内定をもらいながら、UNIX専用PCを自分で組み立てるほどにはパソコンの界隈はそのまま私自身の青春となって、現在に連なっていきます。楽しかった小学校時代、受験戦争の勉強漬けから逃れたい一心で、あるいはちょっとした息抜きに楽しんだパソコンゲームにハマっていた下駄ばきの小学生から30年余。少しはパソコンやインターネットが日本に普及する文化の肥やしぐらいにはなったのでしょうか、私の青春は。