父親も驚いたことだろう。なにしろ、前日まで「生活するために仕方なくやる仕事」として仕方なく田んぼに出ていた息子が、まるで別人の勢いでコンクールについて話しているのだ。同時に、息子の変化が喜ばしかったに違いない。父親は大きく頷いた。

「じゃあ、コンクール狙っていくか!」

米・食味鑑定士協会が主催する「米・食味分析鑑定コンクール」は、1998年に開幕した。第1回は400検体に満たなかった出品数が右肩上がりに増えて、今や5000を超える。第10回(2008年)より海外からの参加も認められており、世界最大級の国際コンクールだ。そのなかで、最高賞の金賞に選ばれるのは毎回20名弱という狭き門である。

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コメ作りの名人に行脚の日々

関親子は、大胆な行動に出た。全国に散らばるコメ作りの名人に教えを請うたのだ。

最初に訪ねたのは、南魚沼でいち早く「米・食味分析鑑定コンクール」に参加し、地域を代表する存在となっていた笠原農園の笠原勝彦さんだった。関さんは面識もない笠原さんにいきなり電話をかけ、「明日、伺ってもいいですか」と頼み込んだ。笠原さんは、同じ地域の若手農家の求めを受け入れた。これを機に笠原さんのもとに何度も足を運び、話を重ねるようになった。そのうちに少しずつ距離が縮まっていった。

関さんは折に触れて「いつか遠藤五一さんのところにも行ってみたい」と伝えていたという。するとある日、「一緒に行くか」と声をかけてくれた。こうして関親子は、山形へと向かった。

「日本一のコメ職人」とも称される、山形県高畠町の遠藤農園12代目、遠藤五一さん。有機農法で作ったコメで「米・食味分析鑑定コンクール」に出品し、2003年から5年連続金賞を受賞した。この時、5回連続のコンクール入賞と3回以上の金賞の受賞者のみが授与される「ダイヤモンド褒賞」も受け取っている。2025年時点で、この賞を受けた人は全国に7人しかいない。笠原さんもそのひとりだ。