関さんが名人たちから学んだのは、徹底した科学的アプローチ。おいしさにつながるいくつもの要素を細かく分析して、数字を突き詰める。その数字を安定して出すためにどう栽培するか、というのが勝負どころだ。

「1次審査ではコメに含まれる水分量やタンパク質などを計測する『食味値』で85点以上取らないと次に進めません。例えば、コメに含まれるタンパク質の割合を低くすると、食味値が高く出ると教わりました。そのためにタンパク質を抑える栽培方法があるんです。ほかにもいくつかの要素を取り入れたら、1次審査を突破するのは難しくありません」

難関は、コメ粒の光沢や粘りに関係する「保水膜」の厚さを測る2次審査の「味度(みど)」だった。その頃、名人たちも誰ひとり「味度」で高得点を出す方法を知らず、試行錯誤を重ねていた。関さんはそこにチャンスを見いだし、一心不乱に「味度」の解明に突き進んでゆく。

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当時、標高500メートル以上の場所で作られたコメが「味度」の高得点を出す傾向が強く、カギを握るのは標高だと指摘されていた。関さんはそこで歴代の受賞者の生産地、気候、高度、点数を分析した。すると、必ずしも標高だけで決まるわけではないと気が付いた。

「未熟なのに甘い枝豆」がヒントに

ここからは詳しく書くことができないが、関さんはネットで検索し、専門書を読み漁り、自問自答を繰り返すうちに、「日照時間」にヒントを得た。そして、関農園の田んぼでいくつか条件を変えて実験することで、「味度」をコントロールできると発見する。

関さんはさらに、最終審査の官能審査に狙いを定めた。官能審査とは「実際に食べたときのおいしさ」。いかに審査員の舌にインパクトを残すのか、関さんは24時間、寝ている時にも夢を見るほど考え続けた。するとある日、自宅で枝豆を食べている時にふと「枝豆って甘いよな」と感じる。

枝豆は、大豆が熟す前の「緑」の状態で収穫したものだ。フルーツは熟したら柔らかく、甘くなるのに、枝豆はなぜ未熟な状態のほうが柔らかくて、甘いのだろう? この疑問から、植物について怒涛のリサーチが始まる。その結果、収穫のタイミングによって「うま味」を増す方法がわかった。