実写邦画として興行収入歴代1位の大ヒットを記録し、2026年2月には全米公開も果たした映画『国宝』。そんな世界的ヒット作の中に、道や橋を愛する私にとって“絶対に見過ごせないシーン”があるという。
主人公たちが成長してゆく過程で度々登場する印象的な赤い橋。それが、大阪府にある玉手橋だというのだ。聞き捨てならない話だった。
玉手橋は非常に変わった見た目と構造をしており、私が数年前にたまたま近くを通り過ぎた際、思わず引き返して写真を撮るほど強烈に印象が残っていた。『国宝』の話を聞いた私は、映画館……ではなく、大阪に向かった。
◆◆◆
鉄道会社が造った「歩行者・自転車専用の吊り橋」
玉手橋の全長は151メートルで、自動車は通行できない歩行者・自転車専用道になっている。立派な橋脚が4基あるが、その上に載っている桁は薄っぺらくて、少々頼りなげに見える。
そして、全ての橋脚と両岸からワイヤーが張られており、吊り橋になっているのだ。
通常、吊り橋といえば巨大な2基の橋脚でワイヤーを吊り支えていることが多いが、玉手橋は5つの小さな吊り橋が連続して架かっているような構造をしている。これを5径間吊り橋といい、全国を見渡しても唯一無二の存在だ。平成13年には、吊り橋としては日本で初めて登録有形文化財に登録された。
玉手橋が変わっているのは、見た目だけではない。その生い立ちも相当に特殊だ。歩行者・自転車専用の人道橋であるにもかかわらず、戦前に鉄道会社が造ったという経緯がある。


