国際アダルト競技会に出場し続けて

 この間、2011年に国際アダルト競技会に初出場して2位となり、翌年以降はダブルアクセルを武器に優勝を重ねた。国際スケート連盟が公認する同大会は、各国から28歳以上の引退した元選手やスケート愛好者が参加して行われる。80歳でアクセルジャンプに挑戦する参加者もいるこの大会で、伊藤はフィギュアスケートの奥深さを知ったという。やがて「50歳でダブルアクセルを跳ぶこと」を目標に掲げて練習に励んだものの、その歳になった2019年の大会で達成できず、深く落ち込んでしばらく遠ざかった。しかしその後、楽しく滑るという原点に立ち返って大会に復帰、2024年まで通算6回出場している。

2018年、NHK杯フィギュアのレジェンドオンアイスで演技する伊藤みどり ©時事通信社

 2024年の雑誌の取材では《スケートは見るだけでなく、生涯スポーツとして何才まででも実際に滑り続けられるようになりつつあります。私はいま、その先駆けになりたいんです》と夢を語っていた(『女性セブン』2024年8月8・15日号)。力強いジャンプによってフィギュアスケートの歴史を変えた彼女が、50代半ばにして新たな形で先駆者となろうとしているのが頼もしい。

浅田真央、中井亜美、島田麻央に引き継がれたトリプルアクセル

 伊藤が女子で初めて成功させたトリプルアクセルは、その後、同じく名古屋のリンクで山田満知子コーチから指導を受けた恩田美栄、中野友加里、そして浅田真央へと引き継がれる。20年ほど前には採点方式の変更により高難度のジャンプが厳しくジャッジされるようになり、挑戦する選手が減るなかでも、浅田はひとり跳び続けて世界の頂点で戦った。おかげで、中井亜美のように幼い頃に浅田に憧れた選手たちによって継承されることになる。

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2014年ソチ五輪での浅田真央。フリープログラムでは、トリプルアクセルを含む6種類の3回転ジャンプを着氷させた ©JMPA
浅田真央と伊藤みどり(伊藤みどりのインスタグラムより)

 いまやジュニアの大会でもトリプルアクセルを跳べる選手たちがしのぎを削っている。昨年末(2025年)のグランプリファイナルのジュニア女子は、出場する全6選手がトリプルアクセルを跳べるというハイレベルな争いとなった。それを制して4連覇を達成したのが、島田麻央だ。島田は、先のミラノ・コルティナ五輪で銅メダルを獲得した中井亜美と同学年ながら、昨年7月1日の時点で同五輪の出場条件となる17歳に達しておらず、出場はかなわなかった。