岡田は「対策を考えた」と言った。その対策は「危険なところには行かない」というシンプルなものだった。ゆり香夫人は言う。
「年子の2歳と3歳を連れて海外に行くというのは、いろいろな面でやっぱり危ないじゃないですか。それに、周りのスタッフの方に迷惑をかけることも心配でしたし、たくさんのリスクが伴う可能性もありました。でも、“危ないところに行くときは、私たちはホテルで待っていればいいよね”とか、“ホテルのプールで遊べばいいよね”とか、BLFの方から具体的な案を出していただいたので、そこはスムーズに“じゃあ大丈夫か”っていう思いで行かせていただきました」
カンボジア行きを選んだ理由
私は、率直な疑問をぶつけてみる。
「ハワイの方がもっと快適に、もっとのんびりできたのではないですか?」
するとゆり香夫人は、何の迷いもない口調でキッパリと言った。
「私としても、ただの家族旅行というよりは、いろんな国に行って、文化も、考え方も、そして生活環境も違う人々を、自分の目で見たいと思っていました。主人も私も、ドキュメンタリー番組が好きなので、いつものような旅行よりも、そうではない文化や暮らしを見られることに興味を持ちました。それがひょっとしたら、後に人生観を変えることになるんじゃないかという思いもありました。こういう機会がないと、なかなか開発途上国に足を踏み入れることもないと思うんです。だから、私もまた迷わず“行ってみたい”と主人に言いました」
そして彼女は、こう続けた。
「これから子どもを育てていく上でも、カンボジアという国で、過酷な環境で育っている子どももいるんだっていうことを知ることは、すごく意味があると思うんです」
そう語ると、彼女はこの旅行に込めた思いを披露する。
「子どもたちが大きくなったときに、私や夫から今回の思い出話を聞いたり、写真を見たりして、“父親の思いを継ぎたいな”と思ってもらえるかもしれない。少なくとも、当事者意識を待ったり、何かを感じたりすることもあると思うんです。というのも、私が物心つく前の家族旅行でさえ、後に両親から思い出話を聞いたときに、その国に思いを馳せた経験があるので。子どもたちが、自分で何かしらの支援が出来る年齢になる前に、“自分には何ができるのだろう?”と考えるきっかけにもなる。後に役立つ社会見学にもなる。そんな思いがありました」