「母乳が止まらないんですけど」医務から錠剤を2粒
――産後、体は大丈夫でしたか。
廣瀬 産後3日か4日は軽作業ということで、独居の個室で紙折りの作業をしていました。
最初は母乳が止まらなくて大変でしたね。私は出る方だったので、洋服がベチョベチョになっちゃって。「母乳が止まらないんですけど」と刑務官に話したら医務に呼ばれて、こんなちっちゃい錠剤を2粒ぐらい飲んだら、ピタッと止まりました。
止めたのが原因か分からないけど、激太りしちゃって。たぶんホルモンバランスがおかしくなっちゃったんでしょうね。
――産後、痛みも残りますよね。
廣瀬 痛かったですよ。血も出るし。相談すれば痛み止めみたいなのはもらえるんですけど、私はもらいませんでした。基本的にはナプキンを当てるだけで、安静期間を数日取って、普通の作業に復帰です。
更生への思い「この子のために」
――出産すると「今までの自分と変わらなければ」みたいな思いが湧き上がるものですか。
廣瀬 産んだ瞬間、抱っこした瞬間に、今までの生き方じゃ駄目だなって強く思ったんです。そんなこと思ったの生まれて初めてで。刑務所に行っても反省なんてしたことないのに、この子のために私は変わらなくちゃいけないなって。
――その思いが出所後の更生につながっていくわけですね。
廣瀬 でも出所しても、何をしていいかがまず分からない。「真面目になるってどういうふうに生活して、どんな仕事をしたらいいの?」って。中学生の頃から普通の生活をしたことがなかったから。
――世の中にどんな仕事があるかも分からない。
廣瀬 そうそう。夜の世界にいるか、悪い仕事しかしたことがないから。免許は持ってたけど車を買うお金もなかったから、とりあえず自転車を買って、実家の近くの障害者施設で働いたりとか。あと、ホームヘルパーの資格を取ったりとか。自分なりに、学歴がない分、資格を取ったりして、チャレンジはしてみました。
一緒に働いてる方に「廣瀬さん、今まで何やってたんですか?」と聞かれると「親がちょっと具合が悪いんで、親の介護をしたりとか」とか適当なことを言って、元ヤンだったのを伏せて働いて。
――今までやったことないことをやるって、そう簡単なことじゃないですよね。
廣瀬 未知の世界だけに、すごいストレスがあって。異常なほど上司に対して気を使っちゃうし、ありえないくらい疲れちゃうんですよ。
他にも給食センターで働いたり、社員食堂で働いたりしたんですけど、なんだかうまく自分らしさも出せない。自分の過去を隠しながら働いていて、過去を聞かれても答えに困っちゃって、それを避けるために違う自分を作って嘘ばっかり言わなきゃいけないのが、すごく嫌で性に合わなくて。
