工場の上司から「刑務所に入ってたよね?」と

――勤め先に過去を知る人がいたことは?

廣瀬 大きめの工場で働いていたら、私の過去を知っている人がチラホラいて。「あの人、刑務所帰りでしょ」って偉い人が噂して、途中で「ちょっと廣瀬さん、来てくれる?」って呼ばれたら「刑務所に入ってたよね?」って。

 そこで嘘つくのもなんだかなと思って、「そうです。でも、罪はもう償って、ちゃんと面接をして働かせてもらっていて……」とか話してたら、「うちはそういう刑務所上がりの人とかちょっと無理なんだよね」「自主退社という形で辞めてくれないかな」って言われて。やっぱり私みたいな過去があると、普通の会社って駄目なんだなって。

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 真面目に働いていたし、問題も起こしてないのに、こんなふうにクビになっちゃうんだって落ち込みました。

――心が折れますよね。ちゃんとやっているなら、なおさら。

廣瀬 それがあって、過去のことをオープンにして働ける場所を探しました。ちょっとふてくされて「また売人に戻ったほうが楽だよな」って頭によぎった時もあるんですけど、自分の中の天使と悪魔がバチバチ戦って「いやいや、あんた子供いるでしょう」って。

 そんな時、一緒に捕まった子供のパパが刑務所から出てきて。で、彼が「俺の知り合いの土建屋に行けばいいよ」って紹介してくれて。バイトで、水撒きとか、鉄拾いとか、単純作業をさせてもらうことになったんです。

 社長に「ちょっと前に出てきたんだってね」「子供が産まれたのを機に真面目に生きろよ」って受け入れてもらえて。そこで働いている人たちも刺青を入れてたり、「俺だって2回刑務所に行ってるよ」とか話してくれたりで、ざっくばらんに過去の話ができる環境だったんです。

――それ以降、土建業界で働くようになったと。

廣瀬 環境が自分にピッタリだったので、より一層頑張れました。仮面をかぶらなくていいからストレスにならなくて、居心地のよさも感じましたね。それもあって、建設業を極めたいと思って。

 しばらくして、そこの社長が「ちっちゃい仕事でも投げてやるから、お前ら2人暴走族の総長同士で会社でもやったらどうだ?」って。子供のパパも元々暴走族の総長だったんですよ。

 で、「この辺じゃ、お前ら名前も知られてるし、ヤンチャなガキでも預かったりすれば、なんか面白い会社になるんじゃねえの?」みたいな。それで会社を自分たちでやるようになったんです。

――おいくつの時ですか?

廣瀬 31歳で出所したから、そのちょっとあとくらいです。