「アメリカでは、レイオフは日常茶飯事なんです」

Zoomでの通告は青天の霹靂だったとはいえ、予兆はたしかにあった。数カ月前から、役職者の異動や離職が相次いでいた。井上さん自身も、開発現場から外されて先進技術調査を担当する1人部署になっていた。

「自分が重要な役割を担うフェーズが終わったのだと思います」

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年収1500万円でも「最低ライン」

井上さんが2024年5月にレイオフされたHOMMA(ホンマ)は、シリコンバレーでスマートホームを開発するスタートアップ。壁一面のタッチパネルや音声操作の必要なく、住む人の動きをセンサーで検知しながら、自然に生活をサポートする住宅を目指していた。

最大の強みは、スマートホームを超効率的に施工するシステムやツール、各種デザインや施工フローをワンストップで提供するサービスだった。マンション全体で数百戸におよぶ施工でも、建築スケジュールにほとんど影響を与えずに完了できる。実際に複数棟の約60室を施工して賃貸運用すると、賃料が周辺相場から20%プラスであっても入居希望者は殺到した。

井上さんの事業貢献度は高く、「最終的な年収はストックオプション に加えて170Kから180Kだった」と話す。17万ドルから18万ドルは、当時の為替レートで2800万円から3000万円。日本の感覚ではかなりの高給取りに見える。だが、シリコンバレーでは少々事情が異なるらしい。

「ベイエリアではジュニア・エンジニアの最低ラインが120Kといわれます。ポートランドあたりでは100Kぐらい。ただし実際には、ベイエリアで120Kを出しても、まともなエンジニアは集まらないですね」

「AIによる人員削減」の背景事情

シリコンバレーから離れたオレゴン州ポートランドあたりは物価や賃金が安く、駆け出しのエンジニアが年収1500万円ほど。シリコンバレーを含むサンフランシスコ湾周辺では、年収1800万円であってもまともな人材は採用できないという。スタートアップなら、毎月の給料とは別にストックオプションがつかないと優秀なエンジニアは集まらない。