朝ドラこと連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK)で、吉沢亮が演じる錦織友一が3週間ぶりに再登場した第23週。視聴者は画面に映ったその姿に息を呑んだ。「別人みたい」「痩せすぎて心配」――SNSには驚きの声が溢れた。映画『国宝』で新たな高みに到達した吉沢亮が、次に選んだ“表現”とは。

吉沢亮 ©時事通信社

音を正確に表現する『国宝』での台詞回し

「死ぬる覚悟が 聞きたい」

 このセリフ、流行語大賞になってもいいのではないか。映画『国宝』(李相日監督)の名場面のひとつ。主人公・喜久雄(吉沢亮)が『曽根崎心中』のお初を演じていて、そこで発するセリフだ。『曽根崎心中』においても、『国宝』においても、重要な場面でありセリフである。

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 この場面の吉沢亮の発声はじつにすばらしい。高音が伸びて明晰。そのうえ哀切が染み渡る。歌舞伎役者を演じるうえで所作や踊りを再現することが困難を極めたことは『国宝』が公開された頃(2025年6月。いまだに公開されているってすごいな『国宝』)から多く語られてきた。筆者も女形が女性らしい身体になるため肩を落とす方法について興味津々で聞いたものである。そのとき時間がなくて聞けなかったのが声だった。この「死ぬる覚悟が 聞きたい」がすばらしかったのでどうやってあの台詞回しを会得したのか聞きたかった。その方法を知ったのはもっと後のことだ。

 吉沢は楽譜を覚えるようにあのセリフを身体に入れていた。所作指導を担当した中村壱太郎の談話がある。「まずは台詞回しを『音』として覚えてもらうために、歌唱指導者にセリフを音符に落としてもらい、それを二人に聞かせて真似てもらう方法をとった」と語っていた。(※)

 なるほど正確な音として捉えたとするとナットクはするが楽譜を正確に表現することは誰にでもできるわけではない。吉沢亮はそれができる人なのだ。『ばけばけ』で演じている錦織はヘブン(トミー・バストウ)の通訳をやっている設定で、その英語が実に流暢。やはり音を正しく把握して発声する才能があるのだと思う。最近、英会話のCMに出ているがさぞや広告効果抜群だろう。

『ばけばけ』公式Instagramより

 リズム感もいいに違いない。『ばけばけ』ではユーモラスなシーンもたくさんあったが間の取り方や緩急のつけ方に外れがない。いつも完璧だ。まさに「大磐石」(錦織のあだ名)。スキップがうまくできないぎくしゃくした錦織の仕草の表現も抜群だった。