吉沢亮が超えるべき新たなイメージ
イケメンーー美しい顔への偏見を『国宝』の演技で乗り越えた吉沢だが、いまや、もうひとつの山が目の前にあるのではないだろうか。
“『国宝』の吉沢亮”という新たなイメージである。主演映画『国宝』で邦画実写1位の興行成績を22年ぶりに塗り替えた。興行収入が203.4億円に到達し、『ハリー・ポッターと賢者の石』(203.0億円)を超え、邦画洋画合わせて、歴代興行収入ランキング8位にまで来ている。なかなかないことである。異例の大ヒット作の主演俳優として、その後の仕事で、やっぱり『国宝』のほうがよかったと言われたくないだろう。
『ばけばけ』の錦織で記録に甘んじることなく、さらに自分の芝居に磨きをかけてきた吉沢亮の実直さには感動しかない。でも逆にそうするしかないくらいの重責だからこそ、ひとつひとつの役に全力を注ぐのだろう。その心意気や良しである。
推測だが、『ばけばけ』のチーフディレクター村橋直樹は、吉沢が主演した大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)のときのセカンドディレクターだった。大役であった大河の主役(渋沢栄一役)を共に駆け抜けた信頼感があったからこそ、ここまで役にのめり込むこともできたのではないかと思う。
最後にもうひとつ、書いておきたいことがある。これほど鮮烈な演技を見せても吉沢亮は『ばけばけ』において主役をかっさらうようなことはない。どこか控えめに、それでも役の人生を濃密に演じきる。そしてその静かな青い炎が、ヘブンの心に火を灯す。吉沢が初めて朝ドラに出た『なつぞら』の早逝した農民画家・神田日勝をモデルにした天陽も主人公なつ(広瀬すず)のその後に多大な影響を与える役だった。吉沢亮はまるでトーチ(torch)のような俳優だ。共演俳優であれ、観る者であれ、誰かの心に聖なる火を手渡す。
参照
※ https://dot.asahi.com/articles/-/270572?page=3



