――モデルとしての道が、少しずつ開けていったと。

佐野 ただ、実際にやってみると、想像以上にシビアな現実が見えてきたんです。年齢の壁や、収入の不安定さもあるし、いつまでモデルを続けられるのか、そもそもモデルとして成功できるかもわからない。

 しかも当時は大学3年生で、周りの友達がどんどん就活を始めていました。私だけ取り残されているような焦りもあったし、幼い頃から積み上げてきた英語や学業を活かさないのはもったいないという気持ちもあって。

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 それで、モデルの夢を絶って、周りより少し遅れて就職活動を始めたんです。モデル活動の引退式も行い、自分なりに覚悟を決めたつもりでした。

 ただ、今振り返ると、不安な気持ちから逃げたかったんだと思います。実際、就活に切り替えたら肩の力が抜けて、すごく気が楽になったんですよね。

 

ミスコンやモデルの経歴が就職ではマイナスに

――モデル活動を辞めてからの就活は、うまくいったのですか?

佐野 就職活動では、ミスコンやモデル活動がマイナスに受け取られてしまうことが少なくなくて……。

 私が志望していたのが、金融業界だったから、というのも大きな理由だと思います。いくつかの会社でミスコンやモデルの経験を正直に話したら、「金融業とモデル業って、正反対な業界だと思いますが」「金融業界はキラキラしていませんよ?」と言われてしまいました。

――頑張った経験が、マイナスに捉えられてしまうのはショックですよね。

佐野 本当に。ミスコン仲間に聞いてみたら、「隠して就活している」という子が本当に多かった。母からも、「金融と芸能活動は相性が悪いから、確かに隠したほうがいいかもしれないね」「年齢が上の面接官の中には誤解や偏見を持つ人もいるかもしれないから、最終面接とかは言わないほうがいいかも」と言われてしまって。

 それからしばらくは、ミスコンやモデルの経歴は言わないようにしていました。でも、「内気な自分を変えたくて挑戦してきたのに、そんな自分を否定するようなことをしていいんだろうか」って、ずっとモヤモヤしていたんです。

法政大学を卒業した佐野さん(本人提供)

「自分の強みを隠してまで入る会社なんて、行く意味がないよ」

――そもそも、なぜ金融業界を志望されたのでしょうか。 

佐野 最初は、漠然とした憧れからでした。大学2年生くらいの頃に、先輩がゴールドマン・サックスを受けるという話を聞いて。世界の最前線で大きなお金を動かしている姿が、すごくかっこいいなと思ったんです。

 それに、私が就活をしていたタイミングで、金融業界すべてが副業解禁になったんです。就職後も発信活動は続けたいと思っていたので、自分にとってすごく相性がいいんじゃないかなとも思いました。

――結果的に佐野さんは三井住友銀行に就職しますが、モヤモヤを抱えながらの就活をどうやって乗り越えたのでしょうか。

佐野 転機になったのが、三井住友銀行のリクルーター面談でした。「採用には直接関係ないから本音で話そう」というラフな雰囲気だったので、思い切ってモデルやミスコンに力を入れていたことや、その経験が就活でマイナスになっていることを打ち明けたんです。

 そうしたら、「自分の強みを隠してまで入る会社なんて、行く意味がないよ」と言ってくれて。その言葉に勇気づけられて、その後の選考ではこれまでの活動に自信を持って、正直に伝えることにしたんです。その結果、受け入れてくれたのが、私の背中を押してくれた方が勤めている三井住友銀行でした。

撮影=松本輝一/文藝春秋

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