――研究者として働くご両親の姿を間近で見ながら育ったと思いますが、そういった職業に憧れるような気持ちもあったのでしょうか。
藤野 ありましたね。分からないものを解明していく仕事なので、「すごく意味のあることをやっているな」と思っていたんです。当時、僕が人間を相手にすることに苦手意識を持っていたこともあったので、商売をやったり医師になったりするよりは、両親がやっているような研究職の方が面白そうに思えたんですね。
勉強も、答えがはっきり出る物理や数学が好きだったので、子どもの頃は図書館で天文や数学、物理、研究者の伝記ばかり読んでいました。だからもう、自分は両親のように研究者になるものだと疑っていなかったですね。
「普通を通り越している感じ」優秀だった姉と父の関係性
――8歳上のお姉さんはどんな人だったのですか。
藤野 すごく優秀だったと思います。中学時代は生徒会の副会長をしていて、友達もたくさんいました。多才なほうで、ピアノと絵を習ったりもしていましたね。
姉は子どもの頃から父のことをものすごく尊敬していたのですが、その関係性がちょっと普通を通り越している感じがあって。
――どういったところが普通ではなかったと感じますか。
藤野 尊敬を通り越して、崇拝していた感じがあったんですね。母との関係性は特別変わったことはなかったんですが、父に対してはそういう傾向がずっとありました。
僕と姉が生まれる前、両親が箱根かどこかに新婚旅行に行ったそうなんですが、その時に、切り絵で横顔の似顔絵を作ってくれるアーティストの人がいたんですね。それで父と母もお土産に作ってもらったようなんですが、それを家のどこかから見つけてきた姉が、父の顔の切り絵だけを自分の部屋の壁に貼っていたんですよ。
――お母さまの切り絵は貼らずに、お父さまのだけ。
藤野 外見についても、姉は「自分は父親に似ている」という認識が強かったんですね。姉が子どもの頃に描いた家族4人の似顔絵を見てみると、姉と父の顔は目が大きくて、鼻も小さく描いてあって、同じ系統で描かれているんです。
一方で、母と私は丸い顔をしていて、鼻が豚のように描かれているわけです。確かに僕は母に似ているんですけれど、そういう似顔絵からも、姉が父に似ていることを意識しているのがわかるんですよね。

