プロパガンダからは距離を取りたかった

——ただ、そういう政治的なテーマだとプロパガンダ的になりませんか? 台湾は「緑」(与党の民進党系)と、「青」(野党の国民党系)で国家観が非常に大きく違っています。

汪 そこは慎重に距離を取っています。私たちは青でも緑でもないし、政府のために仕事をしていない。中国の映画みたいに、偉い部門から「これを撮れ」と支持される立場でもない。なので、どこかしらの陣営の人は常に怒る(笑)。

——なるほど。それでやっていけますか。

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汪 頭の痛い問題はそこです。カネがない。先日も、台湾政府の文化部に予算を取りに行ったんですが、審査員から「投資家はどれくらい見つかったか」と聞かれて。「ほとんどいません」「なんでですか!?」というやりとりをしていました。今回の映画は、馬祖が舞台なので、なおさら難しいんです(=馬祖は「青」の勢力が強く、台湾海峡危機の話題と親和性が強い「緑」から好まれない)。

実際に高登島でロケをおこなっている。國際橋牌社の公式YouTubeより

 ちなみに、プロパガンダをやればどこかしらがカネを出してくれます。前に、大陸で商売する台湾人ビジネスマン(台商)と会ったことがあるんです。

——中国で大儲けした台商は、中国共産党に協力的な動きをしがちですね。

汪 ええ。台湾の現代史を撮っていると話したら、制作費はいくらだと聞かれて。「ドラマ1シーズンで1億台湾元(約5億円)」と答えたら、安いからカネを出す。8シーズンで8億台湾元(約40億円)を出すと。かわりに、両岸共同で歴史を描く(=中国側の歴史観で台湾史を描く)内容にしようと。酒を飲みながら話を続けていたら、やがて彼は「こっちには国台弁がついている」と漏らした。

——国務院台湾事務弁公室。つまり、中国の対台湾の協力工作部門ですね。

汪 まあ無理ですよね。資金援助は魅力的だけれど、そんなカネは受け取れない。もちろん、懐がさみしいときは、あのとき魂を売っておけばよかったなあとも……。とは、もちろん冗談です(笑)。

 言いたいのは、ラクに制作資金を調達したければカネを出すところはいくらでもある。でも、私たちはそれに従わずにやってるってことです。今回の映画の制作費は8500万台湾元。台湾映画としては大型ですね。いまは借金して作っていますが、最終的になんとか作品で利益を出せればと思っていますよ。