「服を脱げ、死にたいか!」

 その一言から始まった悪夢。かつて中学野球のエースだった男は、なぜ無差別に女性を襲う凶悪犯へと堕ちたのか。家庭環境、挫折、犯罪の連鎖……平成26年、新潟県で起きた事件を追う。なおプライバシー保護のため、登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/続きを読む

なぜここまで堕ちたのか⋯⋯。写真はイメージ ©getty

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更生できなかった野球少年

 比嘉大悟(当時31)は中学時代まで野球部のエースとして活躍し、高校はプロ野球選手も輩出する強豪校に進学したが、半年で挫折。高1秋に中退すると、素行が悪くなり、もともとDV気味だった父親の暴力もますますひどくなり、金属バットで殴られるなどしたため、縁もゆかりもない地方に家出した。

 そこで空き巣を繰り返し、少年院に送られた。19歳で退院してからはガソリンスタンド店員やピンサロの呼び込みをしていたが、寝たばこが原因で現住建造物等放火事件を起こしてしまい、懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年という有罪判決を言い渡された。

 そこで更生すればよかったが、比嘉の場合はさらに転落していくことになった。21歳のときには職場の同僚の女性の洗濯物に火をつけるという放火事件を起こし、他にも強姦致傷事件を起こしていたことが発覚して、今度は懲役5年の実刑判決を言い渡された。当然ながら、前回の事件の執行猶予は取り消され、合計8年も服役することになった。

 塀の中でヤクザの幹部と知り合い、「自動車関係の仕事を紹介してやる」と持ちかけられ、出所後は遠く離れた北国に行くことになった。だが、そこで待っていた仕事はデリヘルの運転手だった。他に仕事がない比嘉はその仕事を請け負うことにしたが、その店に在籍していた同郷のミユキと親しくなった。

 ミユキは多額の借金を抱え、ヤクザに売られてきた女だった。比嘉とミユキはお互いの境遇などを話し合ううちに意気投合。2人で逃げ出す計画を練った。

 2人はレンタカーを借り、500キロ以上も離れた地方都市に転居した。そこで知り合った手配師の紹介で、300キロ離れた別の地方都市で比嘉は電気工事士として働き始めた。ミユキも家計を助けるため、地元のデリヘルで働き始めた。そして、2人は結婚。ささやかな幸せをつかんだはずだった。

 ところが、それでも比嘉の犯罪傾向は収まらなかった。