皇室から教育現場まで 浸透するキリスト教文化
しかし、戦後急速にキリシタン邪宗観は薄れ、むしろ肯定的に受け止められるようになっていった。次のエピソードは日本人のキリスト教に対する好意的な姿勢を端的に示している。
昭和天皇は開戦前からローマ法王ベネディクト一五世と会い、東条英機首相にバチカンを通じて時局収拾を検討するよう提案していた。また敗戦後の占領期、天皇はキリスト教、とくにカトリックに接近し、神道の現人神であった天皇自身が、カトリックへの改宗を検討しているとの説も流れたほどである(『週刊朝日』平成26年10月3日号)。
昭和天皇のみならず、「昭和の皇后良子(香淳皇后)は戦時中からキリスト教の聖書の講義を宮中で受けていた。東京が空襲を受けているさなか、皇居ではなんと聖書の講義が行われていた」という(講談社『本』2015年4月号、原武史・奥泉光「『皇后考』刊行記念特別対談 皇后たちの祈りと神々」)。
また昭和34年、皇室は初めて民間より皇太子妃を迎えたが、美智子妃はカトリックの正田家の長女で、カトリックの名門女子大学である聖心女子大学の卒業生であった。現皇后雅子様もカトリックの田園調布雙葉学園の卒業生である。もし国民の間にいまだキリスト教に対する邪教観が残っていたとしたら、強い抵抗が示されたことであろう。しかし、天皇家がカトリックから皇太子妃を迎えることに対して、国民は反対どころか、祝賀ムード一色で、「ミッチー・ブーム」という社会現象をまきおこしたほどであった。
日本の大学の10校に1校はミッション校なのだが…
現在、日本におけるミッション校は膨大な数にのぼっている。2014年度の統計によれば、全国のカトリック系の幼稚園524、小学校53、中学校102、高校115、短大16、大学19で、その他も含めると総数842校にのぼる。日本全国には大学が781校あるが、カトリック大学19とプロテスタント大学56校を合わせると、キリスト教系大学は75校におよび、日本の大学の10校に1校はミッション校ということになる。
仏教系大学は44校、新宗教系大学6校、神道系大学は国学院大学と皇学館大学のわずか2校のみであるから、いかに日本の多くの若者が幼稚園から大学までキリスト教教育の影響を受けているか、うかがい知ることができる。
戦後80年、学校教育のみならず、テレビや新聞やインターネットなどマスコミを通じて、キリスト教に対してはきわめて好意的な報道がなされてきた。それでもクリスチャンの人口は1%にも達していないどころか、わずかながら減少傾向をたどっている。
まことに不可解な現象である。次にその原因について考えてみることにする。
