日本には約1700万人、実に「7人に1人」とも言われる“境界知能(IQ70以上85未満)”の人たちが存在する。しかしこの層は、知的障害の基準には当てはまらないため支援の対象から外れやすく、その困難さは長く見過ごされてきた。
境界知能であることは、実生活でどんな困難につながるのか? ここでは24歳青年のケースを紹介する。小児科医の古荘純一氏の新刊『境界知能の人たち』(講談社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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ケンタが直面した「7つの問題」
十分な配慮が受けられた高校と異なり、職場内で環境の変化等による不安や不満が増えてきました。就労は継続していますが、日常生活や勤務内容に関する悩みを訴えるようになりました。
ケンタが直面した問題は次のようなものです。
(1)金銭管理ができない
電子マネーやクレジットカード決済が管理できず、家族が給与を管理している。たとえば、時給が50円上がったことで1日1000円散財する、安いものを買ってもどうせ使わないという理由で短期間に高額の買い物を繰り返す、など。
(2)ネットリテラシー(ネット情報に対する判断力や活用する能力)のなさ
ネットで検索し、出会った情報をすぐに信じて、都合のよい方に解釈してしまう。
(3)コミュニケーションの困難さ
自分の困りごとを、他者にわかりやすく説明することができない。職場内のジョブコーチに思ったことを十分に相談できない、またジョブコーチからの助言を正確に家族に伝えることができない。家族は本人の話と職場から得られた情報に差異があると説明。職場内での意向調査のときは、自分の意見を説明できないため、多数の意見に合わせるが、その後自分の意見とは異なることに気づいて悩む、など。
(4)臨機応変な対応ができない
たとえば、電車の運転見合わせがあると、自身で情報を収集したり、駅員に聞いたりすることができず、家族に電話する。買い物を頼まれても、目的の商品がなければ、そのまま帰ってくる。
