(5)健康管理ができない

 外見にこだわり、極端な食生活とサプリ摂取やトレーニングを行う。サプリの能書きを鵜呑みにし、他者のトレーニングをそのまま模倣しようとして、自分の健康状態に合わせた調節ができない。寒くても暑くても、自分の気に入った服を着て出かける。

(6)恋愛感情の一方向性

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 職場内で他の人から好意を寄せられることがストレスで身体不調を呈したが、一方で知り合った女性(境界知能)と安易に同棲することを希望。真面目で倫理感のあるケンタは、家族が反対したため、考えを取り下げ現在も家族と同居している。同棲を希望していた女性とは些細なことで関係が壊れ、何事もなかったかのように思いがなくなった。

(7)自己弁護ができない

 コミュニケーション能力とも関連するが、他者に疑われたり、誤解された場合、相手に説明したり諭すことができない。他者から見ると、すぐに行動化する、逃避すると思われてしまう。

 これらの困難さは、ADHDや不安障害と直接関連するものではありません。一方で、軽度知的障害(おおむねIQ50~70)の人に類似するものです。

境界知能の生きづらさ

 知的障害の人は、就労前から学校卒業後の困難さに備えて支援を受けたり、職場や精神保健福祉機関と連携して相談体制をあらかじめ用意したりすることができます。しかし境界知能だけではその体制が整えられません。

 余談ですが、ケンタの診察を見学していた医学生の何人かに、診察でみられた特徴について質問しましたが、ほとんど答えることができませんでした。専門教育でもほとんどふれられていないのです。それどころか、境界知能の人の困難さは単に社会性の乏しさや自己責任ととらえられてしまう可能性もあります。

写真はイメージ ©getty

 そもそも、24歳の青年の診察に毎回家族が同席すること自体、家族がケンタの一人暮らしは難しいと考えているためでしょう。