芸術作品のような家具と内装
家具や内装は、プロの内装デザイナーに発注するのが普通だ。著名なデザイナーには、仕事を依頼する際、デザイン料とは別に数百万円の指名料を支払う。このため、内見時に写真や動画を撮ることは許されない。デザイナーの著作権に関わるからだ。私は数回隠し撮りを試みたが、すぐに管理スタッフがやってきて厳しい目つきで止められてしまった。写真が出回り、内装を真似されるのを阻止するためだと言われた。
記憶を辿りながら説明を試みたい。
どの物件も天井が高く、ゆうに3メートルはあった。その高い天井から吊り下がるカーテンは、どれも一級品の織物のようだった。床に敷かれた絨毯は、模様、形、毛の立ち具合などが異なり、敷かれる部屋専用に作られた特注品と説明された。
デザイナーの力量が発揮されるのが照明だ。現代アートさながらで、同じものはひとつもなかった。中には、桜の木と花を形どった照明もあり、芸術作品のようだった。クローゼットには、埋め込み式のライトが美しく配置されていて、扉を開けると自動で点灯した。日本でも多くの新築マンションを見てきたが、クローゼットの照明にまでこだわっているものはなかった。
玄関、リビング、客間、寝室、それぞれの部屋には必ず絵とオブジェがあった。見事に年輪を刻んだ切り株や、持ち上げられないくらい大きな水晶もあった。「どこから仕入れたのだろう」と思わずにはいられない。
部屋と部屋、上下階を結ぶ廊下や階段の手すり、そしてエレベーター内部の側面、天井、床はすべて大理石だった。
部屋ごとにある風呂、トイレの床も大理石で、それぞれの石が茶色、灰色、濃い黒、白、ピンク、と異なる表情をしていた。洗面所には床暖房が設置され、洗面鏡の横には小型の冷蔵庫がついていた。化粧品をしまうらしい。鏡に目をやると、鏡面に映像が浮き出てテレビが見られた。
バスタブの上の天井には種類の異なるダウンライトがあり、気分によって照度を変えられるようになっていた。
キッチンももちろんすべて大理石だ。ビルトイン型の冷凍冷蔵庫、コーヒーマシン、食洗機、コーヒーカップ温めマシン、電子レンジなどが機能的に配置されている。
主寝室に至っては、五つ星ホテルのスイートルーム級の贅が尽くされていた。キングサイズのベッドの左右には、10畳ほどのクローゼットがあり、その奥にもまた、浴室、洗面、トイレがある。つまり、夫と妻、別々に水回りと収納があるのだ。
ハウスが10~20軒まとまって建つ「建売り型ハウス」のような物件もあり、その場合、マンションのような共用施設も完備されていた。プール、エステルーム、ヨガスタジオ、スポーツジム、お茶室などだ。当然管理費が必要で、月額100万円前後だと説明された。