ニューラルネットワークを用いたカラー化は単なる「色付け」以上の意味を持っていた。瓦礫の生々しい土の色、人々の衣服の柄、空の青さ。それらが可視化されることで、当時の人々が確かにそこで息づいていたこと、被害のリアルが浮かび上がってきたのだ。
それから約10年。AI技術は日進月歩で進化を遂げてきた。そして今年、カラー化の手法に大きな変化が起きたのだという。
カラー化の手法に大きな変化が起きた年
「以前のAIは、過去に学習したデータから推測して、それらしい色を乗せているだけでした。しかし、現在の生成AI、例えば最新のChatGPTやGeminiなどのモデルは違います。写真に何が写っているのか、それが何年頃のどの場所のものなのかという『文脈』を推論した上で色を付けてくるんです」
渡邉教授によれば、現在のAIに適切なプロンプトを与えると、AIは極めて高度な歴史的知識等を動員して、より正確で自然なカラー化を行ってくれるという。いったいどのような工程でカラー化を進めているのだろうか。
「ChatGPTとGeminiにカラー化の補助作業をしてもらっています。その際に、色の根拠となる文献を明示してもらいます。文献が実在するかを確認し、内容に沿った着彩がなされているか、妥当性を検証し、必要に応じて手作業で色を修正します。
AIに指示すれば完成するというわけではなく、結局はこれまでの私たちの仕事と同じで、地道に修正していくプロセスが必要です。
こちらが投げ込んだ資料だけを元に作業するようにできる『NotebookLM』を使えば、何か特定の出来事について、それに関する資料だけを元にカラー化させるというフローはつくれそうです。ただし、まだ運用はしていません。出来事についての資料を取り揃えるというのも、多くの場合でとても困難な作業ですから」





