戦前から戦後の白黒写真のカラー化、東日本大震災における被災者の行動記録をまとめたプロジェクトをはじめ、過去に起こった出来事の可視化を行ってきた東京大学の渡邉英徳教授。
しかし、いま同氏による「ビジュアライゼーション」は、“過去”の出来事、記憶の継承だけにとどまらず、“現在”起きている災害や国際紛争の状況を伝えるようになった。その背景には、情報が氾濫する現代社会で人々がファクトを適切に受容する意義についての考えがあるという。
現在、渡邉教授が取り組んでいるプロジェクトはどのようなものなのか。現在進行系の課題、リアルタイムで正しい情報を伝える、受け取る方法について、渡邉教授に紹介してもらった。
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東日本大震災の行動軌跡をデジタルマップに可視化
「過去のデータを残すだけでなく、時代に合わせて更新し続けることが不可欠なんです」
渡邉教授がそう語る背景には、あるプロジェクトの存在があった。2016年に岩手日報社と共同で制作した、東日本大震災の被害状況や人々の行動軌跡をデジタルマップ上に可視化した「忘れない」というコンテンツだ。
「『忘れない』を公開してから10年が経ちました。その間に、人々の情報環境は劇的に変わっています。公開当時はパソコンの大きな画面でウェブサイトを見る人が多数派でしたが、今はほとんどの人がスマートフォンからアクセスします。10年前の重いデータやUI(ユーザーインターフェースの略。ソフトウェアの操作画面や操作方法)のままでは気軽に見てはもらえません」
そこで渡邉教授は今年、この震災マップをスマートフォン向けに最適化するアップデートを行ったという。
プログラミング作業には生成AIを積極的に活用。現代のデバイスに合わせたスムーズな動きと見やすいデザインへと生まれ変わらせ、2026年3月に行った渡邉教授の発信には例年以上の反響があった。記憶を継承し続けるためには、技術や使ってるデバイスの進化に合わせて、デジタルアーカイブもアップデートし続けなければならないのだ。

