焼け野原となった東京の街並み、防空壕の前で身を寄せ合う家族、そして出征していく兵士たちの表情……。東京大学大学院情報学環の渡邉英徳教授が庭田杏珠氏とともに手掛けた『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)に掲載される写真はそのどれもが強烈で、各所で大きな反響を呼んでいる。
いまから81年前、大阪で大規模空襲が起きた3月13日に渡邉教授がXに投稿したポストの写真も同書に掲載されている一枚。当該ポストは37万回表示され、多くのユーザーがその惨状について意見を交わした。
いったいなぜかつての日本をカラー化した写真が、ここまで大きな注目を集め続けるのか。渡邉教授はなぜ白黒写真のカラー化に取り組み続けるのか。ご本人に話を聞いた。
◆◆◆
モノクロ写真のカラー化に取り組み始めた“きっかけ”
「もともと私は、戦争や災害の膨大なデータを分かりやすくまとめ、多くの人に伝わりやすくする『ビジュアライゼーション(可視化)』の研究をしていました。そこから『AIとカラー化した写真でよみがえる 戦前・戦争』につながる古写真のカラー化に取り組むようになったのは、2016年のことです」
2016年といえば、広島の被爆の実相を伝えるデジタルアーカイブ「ヒロシマ・アーカイブ」を渡邉教授が発表して5年目の節目だった(同様の取り組みを行った「ナガサキ・アーカイブ」は2010年公開)。大きな反響のあった同プロジェクトだが、渡邉氏は当時の記憶をより鮮明に、かつ現代の若者たちにも届く新しい表現手法を模索していたという。
「ちょうどその頃、ニューラルネットワークと呼ばれる技術を使って写真をカラー化できるサービスが公開されました。そこで試しにヒロシマ・アーカイブに収められている当時のモノクロ写真をカラー化してみたんです。
その時の衝撃は今でも忘れられません。それまで、どこか遠い過去の出来事として凍りついていた白黒の写真が、色をまとった瞬間に、現在に蘇ったような生々しさを放ち始めたのです」





